第3章 愚者共の茶番劇
第183話 歪んだ心、許されざる精神
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たため、鮎美先生が研究していた人工臓器や人工骨格で補強することになったのである。彼女の発明品には振り回されることの方が多かったが、今回ばかりは命を救われてしまったらしい。
――だが、今の俺の身体を保っているそのパーツも、現状では試作段階でしかない。しかも、俺自身はメディックシステムの中で丸一ヶ月も昏睡状態になっていた。体力は、決闘前より格段に落ちている。リハビリの度に、俺はそれを痛感させられていた。
結果、途中からメディックシステムを降ろされた兄貴は、こうして意識不明の重体のまま病院で眠り続け――完治した俺の方も、完全な生身ではなくなっていたのだ。
全ては俺の過失。俺の行動が今回の事態を招き、兄貴をこんな風にしてしまった。許されることでは、ないだろう。
家族を傷付けた上で今の生き方を続けていくなど、できるはずもない。やはり俺は、怪物にもヒーローにもなれなかったのだ。
――そう、思うものなのだろうな。俺に、真っ当な人間の心があったなら。
「……ごめん」
俺は動かない兄貴の前で、そう呟いた。だがそれは、兄貴だけではなく――家族にも向けられた言葉だった。
大切な兄弟を死地に追いやった、俺のエゴ。それは、俺自身が最も許してはならない精神であるべきだった。
それなのに。俺を守ってくれた兄貴が、こんな目に遭ったというのに。
――後悔していない自分が、居るのだ。悪魔のような自分の心の内側の、一番深いところに。
「……龍亮は、自分が着鎧甲冑を使えないことは三年前から聞き及んでいたのだそうだ。稟吾郎丸さんが、全て話してくれた」
「亮ちゃんはね、本当は太ぁちゃんの代わりに戦いたかったのよ。危ないことなんて、させたくなかったのよ。それが出来なかったあの子は、虚勢を張って太ぁちゃんの背中を押すことしか出来なかった……」
「我が一煉寺家の拳士が持つ、超常的身体能力は、装着者の体力に応じてパワーを発揮する着鎧甲冑のシステムを狂わせてしまうらしい。強すぎる我らの力が、『常人に対する計算』で成り立つ科学の鎧を惑わせてしまった、ということなのだろう。だからこそ、常人として育った後に入門したお前だけが、着鎧甲冑を纏った上で我が拳法を行使することが出来たのだそうだ。我が家の名前を聞いた上でお前の体力を見た稟吾郎丸さんは、三年前からその可能性に着目していたらしい」
「亮ちゃんはね、ずっと後悔してたのよ。弱いから助けられないんじゃなくて、強すぎるから太ぁちゃんを助けられないってことが、凄く歯痒かったんだと思う。だから今回の亮ちゃんの頑張りは、きっと本望だったんじゃないかしら。亮ちゃんはね、絶対に太ぁちゃんを恨んだりしてないから……あなたが心配することは、ないのよ」
そんな俺の胸中を知ってか知らずか、両親は俺が瀕死に
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