第181話 禁じられた着鎧
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鉄骨は俺の背中から胸元を突き抜け、砂利の中に深々と埋まっている。
自分に何が起きたのかを俺自身が悟る頃には、バイザーの視界が俺の血で閉ざされていた。次いで、重たい何かが墜落する轟音が断続的に響き渡り、天井を支える俺の両手に振動が走る。
だらり、とバイザーにへばりついた血が落ちていくにつれて、その音の実態が少しずつ見えてきた。どうやら、俺を貫いたものとは別の鉄骨が、あちこちに落っこちて来ているらしい。
周囲を見渡してみると、いくつもの鉄製の杭が天井をぶちぬいているのがわかる。大量の鉄骨がどこに消えたのかは確かに気掛かりではあったが――まさか、上から降って来るなんてな。
こんな手の込んだマネをしたのがどこのどいつかは知らないが……随分と、痛手を負わせてくれたもんだ。
「お、ごっ……」
膝がかくかくと笑い、両腕に込められた力が抜けていく。呼吸が止まり、目眩がする。
痛みは、ない。ただ、苦しい。息が、できない。
「ああっ、あああ……! テンニーン……テンニーン! や、やだぁああっ……!」
「こ、これはッ……!?」
しばらく腰を抜かしたままへたりこんでいたダウゥ姫が、頭を抱えて泣き叫ぶ。俺と死んだテンニーンとやらを重ねているのだろうか。
ジェリバン将軍も突然の事態に驚愕を隠せず、俺と頭上を交互に見遣っていた。暗雲が立ち込める空が剥き出しにされたせいか、俺が支える天井は豪雨に晒されており、その勢いが更に重量を上乗せしている。
「え……あ……りゅ、りゅう、た……!?」
「あ、あああ、あ……いつっ!?」
「何をボサッとしてらっしゃるの!? 決闘は中止ざます、さっさと龍太様の救援に向かいなさいッ!」
「龍太先輩……!」
一方、ギャラリー側もこの事態にたまげているらしく、救芽井と矢村はあまりの展開に呆然と立ち尽くしていた。そんな彼女達の尻をひっぱたく久水先輩も、明らかに声色に焦りを滲ませている。
四郷の悲痛な呟きが聞こえた頃には、我に帰った救芽井が深緑の着鎧甲冑を纏いながら、こちら目掛けて全力疾走していた。世界初の着鎧甲冑、「救済の先駆者」だ。
「な、なんてことだ……! と、とにかく僕も!」
「いかん剣一君! まだ何かあるかも知れんのだぞッ!」
「……あのレーザー、やはり……!」
古我知さんも尻を叩かれて飛び出した救芽井に続き、俺の傍へ駆け寄って来る。彼を制止せんと伊葉さんが叫ぶが、留まる気配はない。
鮎美先生は俺の惨状に痛ましい視線を送りつつ、上を見上げていた。
そして、兄貴は。
「……」
目を伏せて、ただ沈黙し――拳を握り締めている。
悩み抜き、そして何かを決断する前触れのように。
――兄貴。俺は、死ぬのか? 兄貴は、どう、思っ
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