第181話 禁じられた着鎧
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付けた古我知さんと同じ色を湛えている。
しかし、そんな彼が最初に見せた行動は俺の予測から大きく外れたものだった。
兄貴はいきなり救芽井の後ろから、振り下ろすような手刀を見舞ったのだ。
戦闘ロボットを素手で破壊する、正真正銘の「超人」のチョップを背後から喰らっては、いかに着鎧甲冑といえどただでは済まない。背面のバックル部分に隠された、深紅の円形スイッチを覆う防護ガラスが一瞬で砕け散り……その奥に眠る強制着鎧解除装置が作動された。
悪意ある第三者に強制解除されないための防護ガラスは、本来ならば着鎧している本人のパワーでなければ破壊できない。その設計思想を根本から覆すチョップに、救芽井は短い悲鳴を上げる。
彼の一撃を受けた救芽井はあっさりと着鎧を解除され、今度は瞬間止血剤を握ったまま砂利の地面に突き飛ばされてしまった。咄嗟に顔を上げた彼女の信じられない、といいたげな表情があらわになる。
「……済まねーな、樋稟ちゃん。頼めるような立場じゃねーが……その球、ちゃんと弟に使ってくれよ」
「い、一体なにをッ……!?」
救芽井の視線は、兄貴の手に握られた翡翠色の「腕輪型着鎧装置」に向けられていた。その行動に、古我知さんと将軍も目を見張る。
「龍太。わりぃな、これくらいしかしてやれない――ダメな兄ちゃんでさ」
当の本人はそんな視線など全く意に介さない様子で、俺と向かい合うように天井を支える。
次いで、今まさに力尽きようとしている弟と全く同じ姿勢で、兄貴は自分の右腕に嵌めた「救済の先駆者」の腕輪を一瞥した。
「……着鎧甲冑」
そして――僅かに伺えた微笑と共に。
聞き慣れた言葉ではあるけれど、彼の口からは一度も聞いたことのない「コール」が、廃工場に轟くのだった。
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