第181話 禁じられた着鎧
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うとしても。胸を貫かれ、呼吸を遮断された俺の声量などたかが知れている。
「まだなん!? まだ動けへんの!? 龍太は、龍太はどうなんのッ!」
「取り乱しては……取り乱してはなりませんわよッ! 龍太様は死にません、死んで……たまる、ものですか……!」
「梢……」
一方、着鎧甲冑部の面々の表情は、さらに険しいものになっていた。半ば錯乱状態の矢村を必死に宥めている久水先輩も、唇を強く噛み締める余り、艶やかな桃色の口先から鮮血を滴らせていた。
そんな親友の形相を前に、四郷も顔を曇らせ、服の胸元をギュッと握り締めている。こちらを見遣る深紅の眼差しは、張り裂けるような想いと後悔の念を滲ませていた。
普段は冷淡なくせに、ここぞってところで情に厚くなる彼女のことだ。かつて、自分が機械の身体を持っていた頃のあの力があれば、などと考えているに違いない。そんなものが今も残っていたら、一年前に俺が戦った理由がほとんど吹っ飛んじまうだろうに。
「着鎧甲冑、必要悪、銅殻勇鎧が揃っても動かせんというのか……! これでは、手の打ちようがッ……!」
「えぇ……。それに、龍太君にはほとんど助かる気がないようにも見えるわ。それよりも早くやった奴を探せ、っていいたげね」
「オレッ……ダメ、ダメだこんなのッ! 早くなんとか……あぁ……!」
伊葉さんと鮎美先生も、どうにもならないこの状況に歯を食いしばっているようだった。
鮎美先生は俺の考えを汲み取ってはいるみたいだが、救芽井達にそれを伝えようとしていないところを見るに、彼女も俺をどうにか助けようってクチらしい。
当の俺には、もっと他にやって貰いたいことがあるというのに。そこで泣きわめいているダウゥ姫を、守り抜いて欲しいというのに。
「龍太君ッ! しっかりしてッ! 死んじゃダメッ、死なないでよぉッ!」
そんな俺の意識を断ち切るように、救芽井が懸命に呼び掛けている。半狂乱と言って差し支えない取り乱しようだ。
……すまん、救芽井。プロ合格早々だが、俺はもう殉職らしい。
俺の身体の震えが、少しずつ小さくなっていく。そろそろ、この姿勢を維持するのも限界のようだ。
そんな俺の様子にいよいよ最期を感じたのか、救芽井は手を緩めないままべそをかき、俯いてしまう。
――このまま俺は死に、レスキューヒーローとしての短い人生を終える。それが、避けようのない結末。
そして、その運命付けられた瞬間が訪れようとしていた時まで。俺は、見失っていた。
「あ、に……き」
生まれた時から共にいた、掛け替えのない家族を。
「りゅ、龍亮さ……ッ!?」
いつの間にか救芽井達の傍らまで来ていた、この世でただ一人の兄弟。自分と同じ遺伝子を持った血を見るその瞳は、ここに駆け
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