第181話 禁じられた着鎧
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
大量の鉄骨の重量がのしかかっているはずの天井が、一際大きな軋みの音を上げた。
尽くせる手は、尽くされた。
あとは天命を待つのみ。
そして、与えられた末路は――ハッピーエンドを許さなかった。
「クッ……! まだ、足りぬ、のか……!?」
「まさか龍太君との戦闘で、電力を大量に消耗したせいでは……!」
「そんな……! ダメ! そんなのダメッ! 絶対ダメぇえっ!」
これほどの力をぶつけてもなお、天井は動かない。古我知さんが言う通り、将軍のパワーも限界を迎えようとしているのだろうか。
頭を振り、現実を振り払わんと叫ぶ救芽井の声色が、絶望と恐怖を覗かせている。目の前で人が死んでいく。それはレスキューヒーローの始祖たる彼女にとっては、何よりも堪え難い結果に違いない。
だからこそ、俺の死を止められない自分を責めているのだ。頭上で自分の邪魔をする、無機質な鉄の板に全力を込めながら。
彼女も、古我知さんも、将軍も。誰もが叫び、唸り、渾身の力を天にぶつけ続けている。例え、それが届かない願いの現れであったとしても。
……そんな彼女達に水を差すようなことかも知れないが。
俺は、このまま死んでいくなら、それもいいと思っている。
「……」
混濁していく血まみれの視界の中に、確かに見える褐色の肌。涙に頬を濡らすやんちゃな姫君は今、駆け付けた鮎美先生に保護されていた。
俺が助けた、この命の対価。その無事をこの目に映る世界に認めた時。
安堵する自分が居るのだ。こんな時であっても。
いや、こんな時だからこそ、だろう。
ここで彼女に何かあったならば、それこそ俺は自分が生きてきた意義を見失っていた。
自分も助からなければ、レスキューヒーローとは言えない。それはわかっている。
だけど。彼女だけでも生き延びた事実を喜んでいる、この気持ちを否定はできない。
だから、これでいい。これでよかったのだ。
「……も、う、いい」
ゆえに俺は、今も闘い続けている彼女達に、そう呟いていた。聞こえるはずもない程の小声で。
――この天井が落ちてきたのは、間違いなく人為的なものだ。この場にいる彼女達にも、何らかの危害が及ばないとも限らない。
少しでも全員を危険から遠ざけるならば、すぐさまここから離れるしかない。天井と鉄骨を落とした張本人がどこにいるかわからない以上、とにかく現場から少しでも距離を取るのが先決だ。
俺の命を拾うための行為でさらに被害が拡大しようものなら、その方が俺には堪えられない。
そのためにも、彼女達には一刻も早くここから逃げて欲しかった――のだが、歯痒いことに今の俺には、その考えを届かせる手段がない。
どれだけ声を振り絞っても、どれだけ叫ぼ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ