第180話 予期せぬ流血
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
オォッ!」
狙うは顔面の経脈秘孔。だが、意表を突いたからと言って、やすやすと攻めさせてくれる彼ではなかった。
流れるように振り上げられた赤い脚は、将軍の頭部――ではなく、咄嗟にかわした弾みで彼の左肩に命中したのだ。片方しかない銅殻勇鎧の肩当てが、轟音と共に持ち主の身体から切り離され、吹き飛んでいく。
「ク……!」
そして、ほんの僅かだが……将軍の声に、焦りの色が滲む。畳み掛けるなら、今――!
俺は懐に入り込んだ状態のまま、ガトリングを持つ右腕を狙う――が、そこで何かの違和感を覚え、立ち止まってしまった。
「わ、わあッ!?」
「え……あれ、何……!?」
矢村の、信じられないものを見たような声。さっきまでとは違う、ギャラリー全体に広がるどよめき。そして――ダウゥ姫の悲鳴。
何があったのか。咄嗟に得体の知れない悪寒を感じた俺は、瞬時に真横に視線を移し――僅かに、固まる。
今まで決闘に集中し過ぎて、全く気づかなかった異物の陰。その実態が牙を剥き、俺達の前に現れた――とでも云うのだろうか。
将軍と共に、ダウゥ姫の方向を見詰める俺は……正体不明の「異物」に、戦慄する。
ダウゥ姫の周囲を――謎の赤い光の線が、円を描くように天井から差し込んでいるのだ。しかも、鉄製の天井を紙切れのように焼き切り、砂利だらけの地面に無惨な切り傷を刻みながら。
「あれは……レーザー!?」
「姫様! そこから速くお逃げ下さ――!」
そして、将軍が言い終えるよりも速く。円形に切り取られた直径十メートル相当の天井が、真下のダウゥ姫へ覆いかぶさるように――焼き切られたが故の運命を辿る。
「うっ……うわぁああーっ!」
「ひ、姫様ァッ! ……ぐッ!」
突如、真上から迫る円形の天井。予測不可能なその脅威に、ダウゥ姫が更に悲鳴を上げる。そんな彼女を守るべく、将軍が咄嗟に動き出す――が、さっきの一発で肩を痛めたらしく、一瞬だけ左肩を抑えて足を止めてしまっていた。
「ななな、なんなんやアレッ!」
「レーザー!? なんであんなモノがッ!?」
「いかんッ! 一煉寺君ッ!」
救芽井と矢村が、周囲を代弁するような驚愕の声を上げ、伊葉さんが俺を促すように叫ぶ。
もちろん、俺はそれを聞くよりも速く動き出していた。将軍の鈍重な身体じゃ厳しいってことはとっくに分かりきっていたことだしな。
俺は意識を決闘から眼前の危機へと一瞬で切り替え、ダウゥ姫の傍に即座に駆け付ける。そして、両手を突き上げるように上へ翳し――切り取られた天井を、受け止めた。その衝撃の轟音が、周囲に響き渡る。
「あ……」
「ふうっ……全く、決闘の最中にいきなりなんだってんだよなぁ?」
呆気に取られているダウゥ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ