第180話 予期せぬ流血
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将軍はさっきまでとは違い、ガトリングを使うこともなく棒立ちのままで俺を一瞥した。一度作戦を見抜いた以上、ガトリングをむやみに使うこともない、と踏んでいるのだろう。
無理に俺を追うこともなく、ただ静かに周りを走らせている。どこから来てもさっきのように跳ね返せる、という自信がそうさせているのかも知れない。
向こうは、俺が策に窮して自棄を起こしていると見做している。ならば、そこには付け入る隙があるはずだ。
俺は繰り返し駆け回りながら、その瞬間を探る。この勝負を、意地でも頂くために。
「右か、左か。意表を突くべく、敢えての正面か。それとも、また背後からか。……どこからでも来るがいい、結果は同じだ」
そんな俺と視線を合わせることなく、将軍は静かに何かを呟いていた。聞き取ることこそできなかったが、だいたい何を言っていたのかは想像がつく。大方、俺の出方の予測を並べているのだろう。
今度こそ……その賢いオツムを出し抜いてやる。
周回を始めて、四十秒。普通の人間なら、緊張している状態を続け過ぎて精神が摩耗し始める頃だ。
もちろん、将軍はそれに当てはまるようなヤワな存在ではあるまい。だが、バッテリー残量を考えれば、撹乱を続けられるのはそろそろ限界だ。
一方で、今の将軍は棒立ち――いや、自然体のままで俺を待ち構えている。どこから来ても、何が来ても通用しない自信が、その佇まいから溢れていた。
だが――そんな余裕ぶっこいたマネしてられるのも、ここまでだ!
「フゥッ……チャアァアアッ!」
息を吸い、地を蹴り。怪鳥音を放ち。
将軍の真後ろで、俺は叫ぶ。
「――ヌゥアッ!」
そして、周回している時とは明らかに違う「音」に反応し、将軍はぐるりと回転する。次いで、待ち構えていたかのような正拳突きが罠の如く飛び出してきた。
「……ッ!?」
――だが、その拳は空を裂く。俺を砕くまでには至らない。
将軍が正拳突きに入るモーションには一切の無駄がなく、彼の動きを見てから避けるのは至難の技。――だが、何が来るかをある程度予測できていれば、その限りではない。
俺は将軍が振り返るために、素早く足を動かす……よりも速く、地を蹴った足に急ブレーキを掛け、正拳突きが飛ぶ頃にはその射線を外していたのだ。
もちろん、予測から避ける幅が足りなければそのままパンチを貰っておしまいだし、広すぎればこちらの反撃が届かない。そもそも、何が来るかを読み違えたら、まともに喰らって賭けすら成立しない。
そんな綱渡りの状態で臨んだ時間差攻撃が――どうやら、功を奏したらしい。頬を掠めるように飛ぶ正拳突きの余波に煽られながら、俺は突き進む。決着を付けるために。
「ホォゥアァアアッ!」
「ムッ……
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