第179話 龍虎相打つ
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戦いの流れは、その瞬間を境に大きな唸りを生んだ。
「ホォワァアァアッ!」
「ぐぬッ……!」
鈍く輝く銅色の鉄槌をかい潜り、俺の赤い拳が弾丸の如く――鼻頭の急所、「三角」を捉える。
将軍は僅かにふらつきながらも、もう片方の鉄腕を薙ぎ払うように振るうが、同じ轍を踏んでばかりの俺ではない。
「ぬりゃあぁあッ!」
「く、おぉッ!」
咄嗟に外腕刀で身を守り、その一撃を辛うじて受け止める。俺の身体はその衝撃に押され、両足で地面をえぐりながら真横の方向に数メートル退避させられてしまった。
急所への攻撃で体勢がふらつき、体重が乗らないままでのカウンターだったはずだが……それでもこの威力、か。パワーだけなら、間違いなく瀧上凱樹にも引けを取らないだろう。
「フゥッ……!」
――しかし、それだけでやすやすと勝てるほど、今の俺は鈍くはない。さっきの防御が間に合ったのは、電磁警棒を捨てて体幹が安定し、動作に無駄がなくなったからだ。
長さ三十センチ、重量八キロの電磁警棒。腰に吊されたG型共通のその装備は、残念ながら俺にとっては体幹のバランスを奪う「重り」以外の意味を成さない。
ゆえにそれを外してからが、俺の本領となるのである。着鎧甲冑の超人的運動能力の前では八キロ程度の重りなど些細な荷物に過ぎないが、それでも体重差で敵わない以上、技のスピードと精度で勝負せざるを得ない俺には死活問題なのだ。
敢えて自己のバランスに枷を与え、相手の様子を見てから本性を現して一気に畳み掛ける。
それが将軍に手の内を読む隙を与えないために即興で編み出した、俺の新戦法なのだ。効果の程は、古我知さんとの模擬戦で実証済みである。
「フウッ……ホォオォーウッ!」
「くっ!」
一息ついての怪鳥音とともに、地を這うように姿勢を低くして前のめりになるように突き進む。そんな俺を迎撃すべく、将軍は丸太のような脚でローキックを放った。
外見に似合わぬ速さで迫るその蹴りは、風を裂く轟音をあげて俺の頬を狙う。だが、その攻撃のためのモーションが始まるより早く、俺は次の一手に臨んでいた。
両の手を伸ばして倒れ込むように地面へ覆いかぶさり、手が砂利の上に接した反動で下半身が持ち上がると、一瞬だけ逆立ちの体勢になる。そこから地面に付けられた両手を全力で押し出し――その勢いで突き上げられた両脚が、将軍の顎を打ち上げた。
顎にある急所「三日月」への一撃を受けた将軍は今までよりも大きくよろめき、大きな隙を見せた。脳を揺らされたショックは、やはり大きいものだったらしい。
「フウウッ――トアチャァアアーッ!」
無論、ここまで来ておいて追い討ちを掛けない手はない。俺は畳み掛けるように前傾姿勢でさらに突き進み、銅色の胸に突
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