第178話 真紅の拳と黄金の拳
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「――ホァアァアアアッ!」
俺の顔を覆うバイザーに映されたデジタル時計。その文字が示す時間が、決闘の開始を告げる時。
戦場となる廃屋に、俺の怪鳥音が轟いた。
同時に、地を蹴り一気に距離を詰める俺の視線が、「銅殻勇鎧」の隙間――鎧の関節から露出した電線に注がれた。
……あの線はパワードスーツの生命も同然。あれさえ断てば、容易に決着はつく。
そう確信し、俺は右手を手刀の形に構え、矢の如くジェリバン将軍に躍りかかった。当の将軍は、どっしりと構えたままで動き出す気配がない。
まるで、俺の接近に気付かないかのように。
このまま行けば、確実に仕留められる。――端から見れば、誰もがそう思うだろう。
そして、突き出された手刀が槍のように、電線へ伸び――空を切る。
「やはり、この程度か」
呆れ果てるような将軍の声が聞こえるのと同時に、俺が襲い掛かった右腕は上へ振り上げられていた。黄金の肘鉄を、放つために。
――わかりきっていたことだ。この将軍が、そうやすやすと勝ちを譲ってくれないことなど。
その上で、俺はこの攻撃を選んでいる。古我知さんを一瞬のうちに葬ったという、この「流れ」を。
俺は空振りになった手刀の軌道を、一気に下へとずらしていく。次第に、俺の身体は勢い余って転ぶような放物線を描きはじめた。
攻撃が外れた。その事実を俺が受け止めた頃には、肘からの一撃で勝負が決まる。本来ならば、そんな「筋書き」でこの決闘は終わりを迎えていたのだろう。
少なくとも、将軍の頭の中では。
しかし、そのシナリオに大人しく従うほど、俺は利口ではない。
「――そうかな」
槍の切っ先のようになっていた手刀が、花を開くように掌をあらわにしていく。やがて、完全に「パー」の形になった掌は、砂利だらけの地面と密着してしまった。
次いで、拳を握って構えていた左手も、右手を追うように大地へ向かっていく。
そして、俺の両手が全て地面に付いた時。
その体勢と突進の勢いに導かれた俺の下半身が、弧を描いて縦に回転した。
体重と遠心力を携えた、右足の浴びせ蹴り。その一撃は、肘鉄を放つ将軍の首を確実に捉えていた。
「――これは失敬」
だが、向こうもこんな手に引っ掛かる程マヌケではない。俺の蹴りが首に直撃する瞬間、左腕の外腕刀で咄嗟に防いでいたのだ。
それによる激しい金属音が止まないうちに、将軍の肘鉄が俺の頭目掛けて急降下を仕掛けてきた。しかも、全体重を乗せてのエルボードロップ。当たれば当然、痛いでは済まない。
俺は側転からの浴びせ蹴りを止められた体勢から、瞬時に横へ転がってこれを回避。俺の頭があった場所に、悍ましい亀裂が広がった。
追撃をかわすた
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