第178話 真紅の拳と黄金の拳
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
実に、俺に転機をもたらしていた。
かするだけで吹き飛ばされてしまいそうな、巨大な縦一閃。やがて最大の威力にたどり着いたその力は――空を斬り、地を砕くのみ。
俺を叩き伏せるには、至らなかったのだ。
「むッ……!」
「トワァチャーッ!」
そして、将軍自身がその事実を認識した頃には。
俺の怪鳥音を引き金に打ち出された拳が、彼の懐から下顎に向けて打ち出されていた。
「ぐぉ……ッ!」
赤い拳は頬の下にある顎の急所、三日月に直撃し――将軍の頭が、後方にぐらつく。
しかし、それで終わりではなかった。彼は脳が揺れるような攻撃を受けても、正常な判断力を失うことなく、膝蹴りを反射的に俺の腹へ見舞うのだった。
「あぐッ!」
一瞬とは言え、今の一発への手応えに意識を集中させていたせいで反応が遅れてしまい、俺はその手痛い反撃をモロに食らってしまった。
たまらず数メートル吹っ飛ばされ、受け身すら取れないまま転がってしまう。体重もろくに乗っていないはずなのに、この威力か……。
起き上がってみると、向こうは片膝をついて頬をさすっていた。やはり、今の一発はそれなりに効いていたようだ。
「……思っていた以上、だな。この力を手にして以来、片膝をついたことはなかった」
「そうかい。だったら今度は、初のノックダウンを経験させてやるよ」
「面白い。ならば私も戦士として、君に全力で挑まねばならん。先程までの小手調べとは、訳が違うぞ」
「……そうでなきゃな」
まだまだ彼を打ち倒すには足りない。それでも、こちらの攻撃が通用する、という事実は非常に大きいものがある。
相手を攻略するための、欠かせない糸口になりうるからだ。
「りゅ、龍太君っ!」
「あわわ、だ、大丈夫なん? めっちゃ吹っ飛んどったで……?」
「体重の差はやはり大きいようですわね……一見すると五分と五分のようにも見えますが、龍太様が吹っ飛ばされているのに対して、将軍は片膝をつく程度。この勝負、やはり楽には終わらないようざます」
「いや、それでもあの将軍に片膝を付かせたのはすごいよ……! やっぱり、龍太君は僕が思っていた以上に腕を上げていたんだ!」
「将軍のモーションを見切ることが出来れば……あるいは、なんとかなるかも知れないわね」
一方、この戦況に対する観客の反応は様々。着鎧甲冑部は今後の流れを案じている様子だが、古我知さんと鮎美先生はある程度の勝機はあると、前向きに見ているらしい。
向こう側にいるダウゥ姫は、心臓が止まりそうな程にハラハラした面持ちで、戦いの行方を見守っている。
「今の一煉寺君が剣一君の力を遥かに越えているならば、希望が持てるかも知れんが……」
「……龍亮さん。先輩が何度か古我知さんと戦ったって、言
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ