第178話 真紅の拳と黄金の拳
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なら、なおさらだ。
だから、まずは電線ではなく経脈秘孔――人体に共通する急所を狙い、将軍の読みを乱す。
幸い、向こうの装甲は十年間使いっぱなしだったせいで、随分と弱っている。体重を十分に乗せた上で確実に当てれば、あの鎧の上からでもダメージを与えられるはずだ。
「なかなかの速さだ。それが『救済の超機龍』の力、ということか」
「見損なわないでくれ。俺もコイツも、まだまだこんなもんじゃない」
俺は赤いスーツに覆われた胸を叩くと、静かに少林寺拳法の構えを取り――これから始める攻撃に備え、軽いフットワークを見せる。
断続的に聞こえるはずの俺の足音は、外の雨音に掻き消され、当の俺自身にさえほとんど聞こえて来ない。天井に響いていた、あの得体の知れない金属音も。
「……まだまだ、か。ならば、今度こそ見せて頂きたい」
「いいぜ。仰せのままに――見せてやらァ」
再三、俺は将軍へ向かっていく。相手もこちらの空気が変わったことを悟ったのか、自らの構えた拳に力を込めているのが伺えた。
「ぬぅあぁあ!」
仕掛けたのは、将軍が先だった。
俺が突きを放とうと拳を握るよりも早く、怒号と共に大上段からの手刀を振り下ろして来る。まるで、こちらの手をあらかじめ予知していたかのように。
歴戦の経験と記憶に裏打ちされたカン。俺にはない、彼ならではの力が活きているのだろう。しかし、それだけで俺を制することは出来ん。
俺はさっきのように引き下がることなく、敢えて正面を突き進む。加速していく手刀が最大速度に乗り、俺の手に余る力を得るよりも速く――この一撃を封じるために。
頭上から雷の如く降り懸かる将軍の手刀は、地に近づくにつれて威力も速さも増していく。その勢いが最大になった時、彼の攻撃は真価を発揮するのだ。
それを防ぐには、手刀の速度が最高潮に達するより先に、懐に入りきらねばならない。そして、そのためには絶対に引き下がらない、という覚悟が要求される。
下手をすれば、真正面から体重が乗った将軍の手刀にぶち当たる。だが、そのリスクなくしてリターンは得られない。ゆえに俺は、真っ向から挑む。
空を斬り、地を砕く将軍の一撃が、轟音と共に視界を覆う。まだ最大の威力には至っていないはずなのに、触れてもいないのに――見ているだけで、吹き飛ばされてしまいそうだ。
だが、この段階ならばいなせる。直撃は避けられる。そう確信させるだけの力が、今の俺にはあった。
「ホォァアアァーッ!」
怪鳥音と共に――俺の手刀が、振り切っていない将軍の剛腕を撫でる。力をぶつけ合うことなく、紙一重でかわすように。
そして、将軍の腕は俺の手刀の干渉を受けて外側に動き、数センチにも満たない程度の誤差を生む。しかし、その些細な影響は確
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