第178話 真紅の拳と黄金の拳
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め、俺は素早く転がりながら飛び起きる。向こうはそんな俺の姿を認めつつ、ゆっくりと地面から肘を引き抜いていた。
「なるほど。初めて会った時はまさかと思ったものだが――やはり瀧上凱樹を倒した、という話に間違いはなかったらしい」
「未だに疑われてたのは心外だが……わかってくれたんなら、よしってことにしとこう。ことのついでに、勝ちを譲ってくれるわけには行かないか?」
「私とて、痩せても枯れても一人の軍人だ。そんな冗談に付き合うつもりはない」
「そのパワーで痩せても枯れても、っていう方が遥かに冗談だろうが」
戦いの緊張感。恐怖心。その全てを薙ぎ払うべく、俺は敢えて軽口を叩く。向こうはさすがに戦い慣れているだけあって、全く振る舞いに乱れというものがない。
――こりゃあ、ちょっと長引くかも知れないな。
「す、すごい……! い、今の見えた……!? 剣一さん!」
「いや……やっぱり、龍太君の素質は龍亮さんが言う通り……!」
「おっしゃあー! 行けるで龍太ァ〜!」
一方、観客側では救芽井と矢村がやけに興奮している様子。古我知さんは今の太刀合わせを見逃したのか、微妙に視線を泳がせていた。
他の皆は、ただ静かに固唾を飲んで、勝負の行方を見守っている。ダウゥ姫も、どこか不安げな面持ちで俺と将軍を交互に見遣っていた。
……兄貴や親父の話によれば、俺は歴代の一煉寺家の拳士の中でも、最高峰の素質を持っているらしい。拳法の道に入る時期が遅くなければ、とっくに兄貴や親父を超えていたはず……なのだそうだ。
確かに、幼少期から修練を始めていた親父達とは違い、俺は中学二年までは拳法自体に触れていなかった。たらればは言いたくないが、もし俺の教育方針に拳法が除外されていなければ、今頃は将軍にも簡単に勝てるようになっていたのかも知れない。
「さて――それじゃあ、お遊びはここまでにしとこうぜ。お互いな」
「ほう、余興であの動きか。なかなか頼もしいことを言ってくれる」
――しかし、過去は過去、今は今。過ぎた時間を気にしていてもしょうがない。
とにかく、長期戦になりすぎると勝負が終わる前にこっちの技を見切られかねん。向こうのスタミナが簡単に尽きるとも思えないが……可能な限り、早めに決着を付けなくては。
俺は勢いよく再び将軍へ飛び掛かると、空中から左の回し蹴りを見舞う。それを難無く見切っていた彼は、右腕の外腕刀でそれを受け止め、ほぼ同時に左のストレートを放った。
その巨大な剛拳は俺の顔面目掛けて迫り来る――が、俺はそれよりも早く、右足で回し蹴りを止めた外腕刀を押し込むように蹴り、その反動を利用して後方に回避する。
もちろん、簡単に攻撃を当てさせてくれるとは思っちゃいない。向こうにとっての急所となる関節の電線を狙う
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