第177話 豪雨と異変の中で
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くとも、ジェリバン将軍はそれほどの強さを誇っている、ということだ。彼の身体に刻まれた傷痕が、その力を裏付ける歴史を物語っている。
日の光を浴びていれば黄金の如く輝いていたであろう、銅の甲殻。その全身の至る部分には、銃弾やナイフの傷が痛ましく残されていた。
どうやら、装甲を磨く程度の手入れはしていても、本格的なメンテや補修を行えるだけの予算はなかったらしい。そんなコンディションで最新鋭の古我知さんを倒したというのだから、ますます驚かされる。
一年前に戦った瀧上凱樹と比べれば、僅かに小さいようにも見える将軍だが、それでも俺と比べれば大人と子供程の体格差がある。パワーで対抗などという愚かなマネをしようものなら、一瞬でおだぶつだ。
今の俺が彼に勝るものは、恐らくスピードと性能くらいしかない。それら全てをフル稼動し、なんとしても勝ちを拾わなくては。
そう意気込んでいるうちに、いつの間にか俺は拳を震わせていたらしい。そっと拳を包む柔らかい温もりを感じた瞬間、俺は自分の手を握る久水先輩の方へと振り向いた。
「それでも、龍太様が取り組まれた特訓の成果を以ってすれば、敵わない相手ではありませんわ。お兄様も、東京の久水財閥本社から応援されてましてよ」
「そっか、茂さんにも伝わってんだな。気持ちだけでも十分ありがたい、って後で連絡してやらなくちゃ」
「ええ。残念ながらこの場に出席することまでは叶わなかったようですが、『もし負けたら鮎美さんのパンティーを盗んで来い』とエールを送っておりましたわ。決闘が終わり次第、ぶちのめしておきます」
「……いや、それは俺がやるよ」
茂さんのアホな注文のおかげで、肩の力が少しだけ抜けたような気がした。決闘が終わったら、礼代わりに顔面ストレートだな。
――そう。戦うのは俺一人だが、背中を押してくれる仲間はこんなにいるのだ。
クサい言い方になるが……信頼できる仲間が付いているとわかっている今なら、俺は戦える。
戦ったこともない将軍の強さに、やる前からビビるのは、もう辞めだ。
俺は、俺の思うようにやる。「怪物」になると決めた日から、俺はそう誓い続けてきたのだから。
「じゃあ……行ってくる」
そして、決闘開始予定の数分前。
俺はみんなに向けて静かに微笑み、悠然と歩を進めた。
「うん。龍太君……頑張って」
「フレェー! フレェエー! 龍太ァー!」
「龍太様、御武運を」
「……先輩。みんな、応援してるから……」
背中に浴びる、着鎧甲冑部のエールが心地好い。何も言わない鮎美先生も、俺が背を向ける瞬間まで優しく笑みを返してくれていた。
「おーし、行ってこい弟よ! 骨は拾ってやるぞーい」
「縁起でもないこと言わないで下さいよっ! と、とにかく
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