第177話 豪雨と異変の中で
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にかく気をつけてくれ。旧型のパワードスーツとは言え、将軍本人の実力は折り紙付きだ」
「ああ、わかってる。梢先輩から聞いたが、ダスカリアン人の平均的身体能力は日本人のそれを遥かに上回ってるんだってな。その中でも頂点に立ってるガッチガチの本職、ってわけだ」
古我知さんから視線を外し、俺は将軍の方を見遣る。
既に彼は戦闘準備を万全に整えており、その傍には――どこかいたたまれない表情の、ダウゥ姫が佇んでいた。相も変わらず、男の子のような格好であるが。
――しかし、見るからに鈍重そうな格好だ。あれが噂に聞く「銅殻勇鎧」って奴か。
全身を覆わんと鈍く輝く、銅色の装甲。寸分の隙間もない完璧な鎧に見えなくもないが、その関節の節々には、人工筋肉を支える電線がモロに露出していた。
頭部には、トサカのような斧まで取り付けられている。西洋の甲冑を彷彿させる無骨な外見ではあるが、どこと無く日本の侍が着る鎧にも近しい雰囲気を漂わせていた。
……案外、将軍の祖先が日本人だったりしてな。
さて、アレは救芽井研究所で着鎧甲冑の開発が本格化する以前から、戦闘用のパワードスーツとしてアメリカで開発が進められていたという話だが――その話を鵜呑みにするなら、十年近く使い古された旧型だと言う古我知さんの言葉にも納得がいく。
十年間に渡って使い尽くされ、改良も行われていないパワードスーツなど、開発されて一年経つか経たないかというレベルの「救済の超機龍」や「必要悪」と比べれば、骨董品のようなものだ。
しかし、彼はその性能差を覆し、古我知さんを破ったらしい。
性能の格差を跳ね退ける、ジェリバン将軍の圧倒的身体能力。考えたくないが、人外レベルの兄貴にも肉迫する次元に達しているのかも知れない。
もし、生身でも着鎧甲冑と張り合えるような兄貴が、着鎧してさらに強くなったら――という悍ましい妄想を浮かべたのは一度や二度ではない。その「あってはならない」世界に到達したのが彼であるとするならば、古我知さんが敗れるのも納得がいく。
古我知さんの身体――「必要悪」の電動義肢体は、最新鋭の完全な戦闘用として作られている。あの瀧上凱樹と、真っ向から渡り合える程の性能を持っているのだ。
その彼が、たったの一撃で敗れ去った。そんな話を聞かされた時の衝撃は、今でも忘れられない。
一年前の彼は、俺の知る中では間違いなく「最強」の座に君臨していた。周りが非兵器を謳う着鎧甲冑ばかりなのだから、ある意味当然と言えば当然なのだが。
それでも、瀧上凱樹と正面きって互角に戦えるポテンシャルを持つ彼が、たったの一撃で敗北を喫するなど、普通に考えれば悪い冗談としか思えなかった。だが、事実として敗れた彼は、ダスカリアンを救うための決闘を俺に託している。
少な
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