第176話 暗雲の朝
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となんじゃよ」
「あっ……!」
「ましてや、この件で既にダスカリアンの国民の一部には、十一年前の惨劇が『噂』として出回ってるって話だ。いっそ王女も将軍も国も纏めて滅んでくれた方が、日本としては手っ取り早くて都合もいい。『死人に口なし』って言葉もあるだろ?」
――そう。事なかれ主義を重んじる現代日本の政府にとって、「臭いものには蓋を」は必須技能なのだ。かつて、瀧上凱樹の一件を隠蔽したように。
そんな彼らにとっては、ダスカリアン王国の生き残りなど邪魔者以外の何者でもない。手を汚す必要もなく、自分から死にに行ってくれるなら、まさに万々歳といったところなのだろう。
今回の件は小国が対象とは言え、立派な国家レベルの問題だ。救芽井エレクトロニクスに知れる過程で、日本政府がこの件の情報を掴んでいても不思議じゃない。
まさか決闘の邪魔立てまではしない……と思いたいが、少なくとも俺への応援は期待できそうにない。死んでくれた方が都合がいい人間を助けようってんだから、当たり前なのだろうが。
――しかし、彼らの考えも全くわからないわけじゃない。不利益しかないとわかっていて助けに行くなんて、確かに頭のいい話じゃないからな。
それでも勝たざるを得ないのは、それが「仕事」だからだ。相手がどこの誰だろうと、着鎧甲冑を預かる身である限り俺はレスキューヒーローとして動き続ける。
その判断が間違いであったとしても、結局のところは「職業柄」なのだから仕方ないのだ。この思いが怪物の境地に達しているのというのなら、俺はそれで構わない。
「そんなん……あんまりや。確かにアイツはええ奴って感じやないけど……やけど、そんなん……!」
「あぁ、あんまりさ。だからこそ、俺が戦うんだろ。死んだ方がマシな奴だっているのかも知れないが、そんなことは俺の管轄外だ」
「龍太君……」
「だから、正しくなくたっていい。それを決めるのは俺じゃなくて周りのみんなだから。俺は、俺がやらなきゃいけないと思うことをやる。今考えることは、それだけだ」
政府にどう思われようと、俺は俺のやらなくちゃいけない仕事をやる。咀嚼した目玉焼きを飲み込みながら、俺はゴロマルさんに向かい、その旨を伝えるのだった。
それを受けて、彼がどのように感じたのかはわからないが――沈痛な表情を浮かべて「ありがとう」と頭を下げる姿には、哀れみに近い感情が漂っていた。正しさを主張できない中でも戦わなくちゃならないことに、ある種の申し訳なさを感じているのかも知れない。
「……そういえば、剣一を見んのう。よく一緒に特訓しておったと聞いたのじゃが」
「あいつなら、一足先に廃工場に行っちまったぜ。居ても立ってもいられない、って顔してたなぁ」
「そうか……。一年間だけとは言え、あやつもダスカリアンで暮
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