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フルメタル・アクションヒーローズ
第175話 夜空を見上げる父の顔
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みに町民を惑わせてしまったことについては、申し訳ないと思う」

 俺は彼の誘いに乗りつつ、雰囲気に飲まれないために軽く毒づいた。しかし、彼は全く不快な様子を見せず、至って率直に対応している。
 柳に風。一見すればそんな言葉が似合う、穏やかな男だ。しかし、動物に本能で看破される「殺気」を持っている事実が、油断を見せるなと俺に命じていた。

「最近になって、姫様が私の目を盗んで抜け出すことが特に増えていてな。あのお方が気にかけておられる猫のことを、一目見ておく必要があったのだ。――先日は、姫様が世話になった。貴殿の協力に、感謝する」
「え? 昨日のアレ、見てたのか?」
「見ていなくてもわかる。以前は何かと窓から外を眺め、不安がっていた姫様が、貴殿の声が聞こえた昨晩だけは満足げに笑っておられた。今夜も、安心した様子で眠っておられる。子猫の件について、貴殿が何か手を打ってくれたのだろう?」
「……別に。飼い主を探すって言っただけさ。いつまでも一緒には居られないんだから」

 どうやら、民宿前でのやり取りは聞かれていたらしい。その情報だけでほぼ全てを察していたというのだから、驚きだ。
 ……これだけ物分かりがいい人と、国の存続を賭けて戦わなければならないとはな。彼の根本に眠る、話し合いで解決できない武闘派としての一面を、グレートイスカンダルは本能で察知したのだろう。

「そうか。……我々も、あの猫と同じだ。誰かの支えがなくては生きていけない、脆弱な『生き者』。今の姫様には、想像を許される『明日』すらない」
「よそ者の俺が口を挟むもんじゃないだろうが……国の『明日』を自分から潰しに掛かってる人の言葉じゃないな。あの娘の命より、地位の方が大事だってのか」
「いや、大切なのは地位ではない。もちろん王女としての名誉を失うことも多大な損失ではあるが……何よりもあのお方は、『故郷』を離れることを恐れておられるのだ。御家族が眠り、御自身が生まれ育って来られたダスカリアン王国から、去らねばならない日を」

 夜空を見上げる将軍の眼差しは、姫君を案じる色を湛えている。月明かりに照らされ、その憂いは鮮明に映し出されたのだった。

「私の強さで平和が保たれているとは言え、それはあくまでダスカリアンの国内に限った話でしかない。中東全域は未だに各地で戦乱が起き、人々は不安と恐怖に苛まれ続けている。そんな『国の外』を見て来られた姫様が、国王様や王妃様を死に追いやった『日本』に行くことになった時、どれほど震えておられたか……」
「……」
「そんな姫様にとって、貴殿はある意味では希望だったのだろう。初めて訪れる外国、それも御両親を奪った恐るべき国家に踏み入ったあのお方には、当然ながら現地の知り合いなどいなかった。例え姿が似ているだけだとしても、息子の生き写し
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