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フルメタル・アクションヒーローズ
第173話 花淵の血、一煉寺の拳
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 翌朝の修練の終わり。
 大自然に彩られた緑色の世界を、寺の外から見詰める古我知さんは――不機嫌だった。

 別に、今日の特訓内容に不満があったわけではない……はず。訓練中の彼は、常に真剣で生き生きとしていた。
 しかし、今の表情は晴れやかな空に反するように曇り、視線は遠いどこかを見据えている。手の届かない誰かへ、想いを馳せるかのごとく。

 ――その理由をいちいち本人に問い質すほど、野暮なマネをするつもりはない。今朝のニュースを見た時から、彼がこうなるのは想定内だったからだ。

 起床し、修練に向かう前に軽い朝食を摂っていた時。迎えに来ていた古我知さんと一緒に見たテレビのニュースに、あの茂さんが現れたのである。
 今、世間を賑わせているという「レスキューカッツェ」と、それに協力していた「救済の超機龍」。この二つの存在を生んだ救芽井エレクトロニクスのスポンサーである「久水財閥」にスポットが当てられるのは、確かに当然と言えば当然だろう。久水家当主の茂さんの露出が増えても、不思議ではない。

 ――だが、その茂さんが画面に映った時から、既に古我知さんの表情は目に見えて険しいものになっていたのだ。
 財力を嫉んでいるわけではない。スキンヘッドを羨んでいるわけでもない。古我知さんの機嫌が思わしくないのは……鮎美先生が原因なのである。

 一年前。瀧上凱樹と事実上破局した鮎美先生は、自分を救うため懸命に説得に励んでいた茂さんの感情に触れ――それ以来、どこと無く彼に気があるそぶりを見せるようになっていた。
 その一方で、古我知さんにとって鮎美先生は幼い頃からの憧れであり、未だに継続中の初恋相手なのである。……もはや、この先は言うまでもあるまい。

『巷の噂では、久水会長とかの「救済の超機龍」はプライベートの付き合いもあるとか……』
『ふん、まぁな。奴はどうしようもない女たらしではあるが……使命感にかけては右に出る者はいまい。そこそこ骨はある、とワガハイは見ている。我が妹にまでちょっかいを掛けた罪は重いが、な』
『ちょ、ちょっかい……!? すると、「救済の超機龍」が幾多の女性と関係を結んでいる、という都市伝説は――!』
『おっと、そこまでにして貰おう。あの男を罵倒することが許されるのは、全世界に於いてこのワガハイ以外には居ない、ということを忘れないで頂きたい。……そんなことより鮎美さん、見ていますか? 今度の交渉を終えた後の予定として、東京のスイートホテルを手配しております。そこで是非ワガハイとムヒムフムホホー!』
『……え、えー、久水会長が大変いかがわしいハッスルをしてしまわれたので、以上で中継を終わります』

 記者会見で堂々とあそこまでハッチャケられては、古我知さんの心境も穏やかではいられないだろう。
 俺への中途半端
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