第173話 花淵の血、一煉寺の拳
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かに上回る相手との戦い、か。
確かに、ジェリバン将軍の強さは尋常ではないだろう。古我知さんを一撃で倒せる相手と聞いて、警戒しないわけがない。
俺自身もこの一年間でかなり腕は上げたつもりだし、「救済の超機龍」の性能も初期型より大幅に底上げされている。
それでも不安がないと言えば嘘になるし、今の特訓で十分なのかも正直わからない。俺はまだ、彼と戦ったことがないのだから。
「だから……気負うことはない。お前は、一人ではないのだから」
「……ああ。『俺達』できっと、なんとかしてみせる」
しかし、無理だとは思いたくない。
ここまで来ておいて、家族や仲間からさんざっぱらお膳立てされておいて、やっぱりダメでした――なんて結末、俺はまっぴらだ。
「そうだな。それに――お前には、賀織君も付いている」
「ブフッ! な、なんでまたこのタイミングで矢村なんだよ!?」
「何を慌てている。お前と彼女の視線を見れば簡単にわかることだ。ご両親への挨拶は済ましたのか? ちゃんとお土産は用意したか?」
……せっかくいい話だったのに、妙なところで掻き乱してくるから困る。すると、俺が親父のお節介に呆れていたところへ――
「龍太ぁー! 早う行かんと遅刻やでぇえーっ!」
――示し合わせたようなタイミングで、矢村本人の声が向こうから響いて来たのだった。噂をすれば何とやら、とは正にこれである。
「……む、もうそんな時間か。龍太、学校まで優しくエスコートしてあげなさい」
「やかましャア! あーもー、とにかく学校行ってくる!」
俺は畳み掛けるような親父の世話に悪態をつき、さっさと制服に着替えて寺の外へと飛び出していく。
そして、視界に映る、日に焼けた愛らしい彼女の笑顔を網膜に刻むことで――俺の一日は、幕を開けるのだ。
「おーう龍太、もう学校か! 行って来い!」
「龍太君……行ってらっしゃい……」
「ああ、行ってくる! ……あと、もう古我知さんいじめるのはやめたげて」
まんまと親父に乗せられたような気がしないでもない……が、悪い気はしない。
こんな日常が終わる時も、そう遠くはないのだろう。それでも、一日でも長く守り通す意味はある。
「おはよう龍太! さ、行くで!」
「お、おぉ!」
――そして、それは俺のレスキューヒーローとしての「仕事」が全うされてこそのものだ。
だからこそ――将軍に負けるわけにはいかない。それが、彼らが望む結末じゃないのだとしても。
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