暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第172話 夜道を駆ける姫君
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「ごめんな……グレートイスカンダル。いつかお別れしちゃうけど、それまでオレ、頑張るからさ」
「……はい?」
「あ? なんだよ?」
「い、いやその……今、なんて? グレート椅子噛んだる?」
「グレートイスカンダル。この子の名前だよ、カッコイイだろ?」
「あ、ああ、カッコイイデスネー」

 ……にしても、このネーミングは何とかならかったんかいな。ま、まぁ個性に溢れた名前ってことにしとくか。深く考えたら負けな気がする。

「とにかく、決闘が終わったらこの子の引き取り先を探そう。いつまでもここで過ごさせるのもマズいからな」
「……」
「大丈夫だって。この町には結構、動物好きな人が多いんだ。よっぽどのことでもなきゃ、保健所送りになんかならないよ」

 既に名前も決まっているようだし、後は育ててくれる環境を見つけるだけだ。
 俺は膝を曲げ、目線の高さを彼女に合わせる。そして、少しでも安心できるように精一杯笑ってみせた。

「……」

 だが、彼女からの返事はない。訝しむような視線をしばらく俺に向けたかと思うと、やがて視線をプイッと逸らして屈み込んでしまう。
 猫に餌をあげるつもりらしい。袋を破り、程よい範囲で皿に盛っていく。……たまにこちらをチラチラ見ているのだが、これは「お前邪魔だからとっとと帰れ」と言いたいのだろうか。

 確かに俺は別に役に立っているわけでもないし、居ても意味がないとは思う。だが、俺は今すぐにここを離れるわけには行かなかった。
 この町は随分と平和になった――とは言え、元々は日本屈指の無法地帯だ。三年前にファミレスで起きた強盗事件のように、その名残も僅かにある。
 彼女としては、何かあってもジェリバン将軍が解決してくれる、という期待があるからこその単独行動なのかも知れない。が、彼とて人間だ。その可能性は絶対ではない。
 そこまで知っていながら、警察用着鎧甲冑の資格者でもあるこの俺が、本人の言いなりになって引き下がるわけには行かない。鬱陶しがられるだろうが、やむを得ないのだ。

「……感謝なんて、しないからな」
「あはは、そうか。残念だな」

 餌をやり終えて、ダウゥ姫が立ち上がると――再び手厳しい言葉が炸裂。僅かに紅潮し、むくれた褐色の頬を目の当たりにして、俺は苦笑いを浮かべるのだった。

「じゃあ、お休み。グレートイスカンダル」

 そして、微かな微笑みを愛猫に送り、彼女は空地を立ち去っていく。ようやく帰宅、というところか。
 入口でジェリバン将軍が待ち構えてたら、詰み状態もいいところだけど……仕方ない、か。

 俺はダウゥ姫の隣に立つと、無言のまま彼女のペースで歩き続けた。当然ながら、ダウゥ姫がギラリと敵意の篭った眼光を放つ。

「なんだよテメェ。ジャップ風情が、まだ
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