第172話 夜道を駆ける姫君
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四人共、特訓に掛かりっきりになってる俺の面倒を見てくれてることには違いないんだ。感謝しなきゃ。
「あーでも、やっぱりもう少し仲良くなって貰う方が俺としては――ん?」
そうして、彼女達が本当の意味(?)で笑い合う未来に思いを馳せた時。
見慣れた曲がり角に、小さな人影が――
「いでっ!」
――転んでいた。
あの声と、長髪が揺れるシルエットはもしや……?
「お姫様が何やってんだ、こんな時間に」
「え――げっ!? 偽物ジャップっ!?」
駆け寄ってみると、俺の予想が的中していたことがわかる。水玉模様のパジャマを着ていることから、彼女も風呂上がりである事実が窺えた。
月の光に照らされた艶やかな褐色の肌と桜色の唇が、麗しく輝く。それを目の当たりにして、ようやく俺は彼女が「姫君」なのだと実感することが出来た。
相変わらずのジャップ呼びだが、これを矯正するにはなかなか骨が折れそうだ。なにせ伊葉さんや古我知さんはおろか、あのジェリバン将軍が注意しても最後まで治らなかったのだから。
……それにしても、彼女が転んだ後に必死に拾って抱き抱えている袋と皿が気になる。この袋は……ペットフードじゃないのか?
「ジェリバン将軍の話じゃ、二人共民宿に泊まってるって聞いてたけど……」
「う、うるせぇ! お前には何の関係も――あーっ!」
「な、なんだぁ?」
すると、俺の追及を遮るようにダウゥ姫が大声を上げる。近所迷惑なお姫様だな……安眠妨害など、おいたが過ぎますぞ。
一方、その小さくか細い人差し指は、俺の肩越しに塀の上を狙っていた。その先を視線で追う俺の眼前に、一匹の猫が現れる。
虎模様の小さな猫――恐らく野良だろう。この辺りにペットを放し飼いにしてる家庭はなかったはずだ。
闇夜に紛れ、静かに俺達を見つめていたその小猫は、やがて逃げるように塀の上を走り去っていく。まるでどこかの姫様みたいだな。
「ま、待ってー!」
「おい、ちょっ……しょうがないんだから、全く」
その後ろ姿を見届けた俺の脇を、ダウゥ姫が慌てて駆け抜けていく。何度も転んでは、起き上がりながら。
せっかく風呂に入った後だってのに、あれじゃ意味がない。ジェリバン将軍も大変だな……。
だが、今の流れでおおよその事情は読めた。ダウゥ姫は、あの野良猫を世話しようとしてるんだな。
一時的に民宿に泊まってる以上ペットなんて飼えないけど、放っておくのも可哀相だから餌だけでも買ってあげてる――ってところだろう。ジェリバン将軍が同伴してないってことは、また「抜け出してる」ってことか。
そういえば俺も小学生の頃、捨てられた犬に色んな食べ物を持ってきて、面倒見ようとしてたことがあったっけな。結局、その犬は別の家庭で引き
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