第171話 正しさがなくとも
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たの判断全てが、いつも『正しい』と称賛されるとは限らないのだと」
「ああ、わかってる」
……最低でもいいさ。最低なりに、やることをやるだけだ。
「そういえば、この青いバイクは何なんだ? 前にここに来た時は、こんなの置いてなかったぜ」
「あぁ……それね。ただのガラクタよ」
「ガラクタ……?」
そんな折、俺は視界に映り込んでいた謎の乗り物らしき物体を親指で差し、説明を求めた。しかし、鮎美先生の返答は予想以上に素っ気ない。まるで生ゴミのような扱いだ。
ただのガラクタ――そんなはずがあるものか。辺り一面に散らばる部品や発明品と比べて、例のバイクは輝かしい程に汚れがない。ボディ全体がまるで、鏡のように磨かれているのだ。
これが一番新しく造られた作品であるということは、この研究室を初めて見る人間でも容易く理解できるだろう。それくらい、このバイクの存在感は際立っていた。
正真正銘のガラクタでも「鉄屑にしちゃもったいない」と再利用して、たちどころにお掃除ロボットを造ってしまう彼女が、新作のメカをそんな風に吐き捨てるものだろうか?
確かに一風変わった外見ではあるが、移動手段として使う分には問題なさそうにも見えるし、普段の彼女を知っている身としては、ガラクタと言い捨てる彼女の発言には引っ掛かりを覚えてしまう。
「……それにしては随分とイカした出来映えじゃないか。端から見た限りじゃ、ちょっと変わったバイクってくらいにしか見えないが?」
「問題は中身よ。『どうしようもない機構』になるってわかってたけど、結局は知的好奇心に負けて造っちゃったの。結果はお蔵入り直行の駄作だったわ」
「どうしようもない、ねぇ」
こちらと目を合わせず、バイクの方すら見ていない彼女の横顔は、「自分の悪事が発覚した」かのように曇っていた。
それほどまでに忌まわしい代物だとでも言うのだろうか? この不思議なオートバイは。
「――さ。そろそろ良い時間だし、上に上がらなきゃね。剣一君と和雅さんも来てるんだったかしら?」
「ああ。古我知さん、先生に会いたがってたぜ」
「ふーん? まだまだお姉さんに甘えたい年頃なのかなー?」
やがて鮎美先生は俺との対話を切り上げると、椅子から立ち上がり地上を見上げる。――まるで、追及を避けるかのように。
そして俺から古我知さんの話題を振られた頃には、妖艶な笑みを浮かべて微笑む、いつも通りの姿を見せていた。
……あぁ、こりゃあ気づいてないな絶対。古我知さんも苦労が絶えんねぇ。鮎美先生の鈍さにも、困ったもんだ。
「さ、じゃあ行きましょうか。それとも……あなたも先生に甘えたい?」
「謹んで遠慮しとく」
「あん、いけず」
俺がここに来た時に入った穴とは別に、この研究室には地上に繋がる
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