第170話 地下室に眠るバイク
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歳は三十代。流れる川のような藍色の長髪をポニーテールで纏めた、病的なまでに白い肌と女優顔負けのスタイルが特徴の美女。……四郷鮎美。四郷の姉にして、着鎧甲冑部の顧問だ。
保健室の養護教諭でもある彼女は、白衣が似合う美人教師として、校内でも人気が高い。――この部屋を見る限り、女子力は皆無のようだが。
それでも、この女性が世の中に貢献しているのは事実だ。彼女が四郷と二人で救芽井エレクトロニクスの開発に協力し、余分なコストの削減や性能の底上げに成功したことで、人命救助の能率は飛躍的に高まっている。
まだ開発途中ではあるらしいが、かつて携わっていた人工義肢の技術を応用した、人工臓器の研究も進めているらしい。国内外で、彼女達姉妹の功績を讃える有力者も多いのだとか。
――それでも、彼女達姉妹は決して表舞台に上がろうとはしない。あらゆる研究機関のスカウトを蹴り、彼女達は今もこの町で暮らし続けている。
もう、嫌気がさしたのだろう。自分達の力で誰かを傷つけてしまう、そんな可能性を秘めた世界に出ていくことが。
「……ん?」
そんな時。
俺の視界に、見慣れないモノが映し出された。以前ここに訪れた時には、置かれていなかったモノだ。
蒼く、流麗なラインを描く――そう、例えるならば、蒼い身体を持つ馬のような形状。
かつて、四郷姉妹を捕らえていた悪夢の象徴たる、鋼鉄の肢体を彷彿させる――その色を湛えた、一台のバイク。
その背後には、排気口にしてはやけに巨大な筒が二つも取り付けられていた。
――こんなもの、いつの間に……?
「……ん。あら、寝込みを襲いに来たのかしら? あなたにしては、なかなか強引じゃない」
「うッ!?」
そして、それに気を取られていた俺の不意を付くように――鮎美先生は眠たげな目をこすり、挑発的な視線をこちらへ向けるのだった。
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