第170話 地下室に眠るバイク
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「全く……龍太様の猪突猛進には、いつものことながら呆れるしかありませんわね。あのような恩知らず、生半可な神経の人間ならばとっくに見捨てられているはずでしょうに」
「ま、それが龍太のええところなんやないの? アタシらはしょっちゅうそれでヒヤヒヤしとるんやけどな」
そんな俺の発言に、何か気に食わないところがあったのだろうか。久水先輩と矢村の二人は、目を細めてこちらを睨んでいる。
「……あの去り際のダウゥ姫、間違いなく女の顔だった。先輩の無節操さには言葉も出ない……」
「人をやきもきさせるの、すごく上手だもんね。龍太君は」
加えて、四郷と救芽井までもが不機嫌そうに頬を膨らませていた。
……おかしいぞ。妙だ。俺は今、凄くカッコイイ台詞をぶちまけたはずなのに。「龍太君かっこいー」くらいは聞けてもいいんじゃないか? 嘘でも言ってくれていいんじゃないか?
「……とにかく、この一週間で少しでも戦い慣れておく必要があるよね。僕に協力させてくれないか」
「そうだな。じゃあ、早速明日から始めようぜ。山の外れに、いい特訓場所があるんだ」
俺は古我知さんの提案に応じ、相槌をうつ。「一煉寺」での修練に、客が一人増えることになりそうだ。
その時の古我知さんは、一点の揺らぎもない真っ直ぐな眼差しで俺を射抜いていた。自分の失態を少しでも取り返そうと、償おうと……必死なのだろう。
「あら。それよりも我が久水財閥本社の地下にある、特設訓練所ならばより効果的な特訓が――」
「背後にチェーンソーを付けたベルトコンベアの上を走る練習はもう御免だ!」
「資格試験前の梢先輩のスパルタを思い出すわね……」
すると、今度は久水先輩が俺にねっとりと絡み付くような視線を送ってきた。その発言から想像される過去を掘り起こされ、俺は条件反射で拒絶反応を起こす。
俺を庇うように前に立ち、しっしっと追い払うように手を振る矢村を見つめながら、救芽井はしみじみとした口調で俺の古傷をえぐるのだった。
「……酷いざます。あのあと、試験前で溜められていた情欲がワタクシの肢体にぶつけられる瞬間を、今か今かと心待ちにしておりましたのに」
「結局行き着く先はそこかいッ!?」
「龍太ッ! 久水先輩に惑わされたらいかんでっ! 歳を取ったらあんなもん垂れる一方なんやから!」
「ふふ、久水財閥特製の秘薬を以ってすれば、そのような些細な問題など即解決でしてよ。これは、ワタクシの母上様ですわ」
矢村は俺の両肩を掴むと、視界全域が小麦色のあどけない顔で埋まる程に、急接近して力説する。そんな彼女の背中を微笑ましく見つめ、久水先輩は胸元のホックを外し――白く膨大な谷間を覗かせた。
何事かと目を見張る俺の視界を、矢村は両手で封鎖しようとする――のだが、それより
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