第169話 嘘だと言ってよ誰か
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ら、どんな悪い奴でも救う「怪物」を目指したこの一年を、全て否定することになるから。
俺は――この戦いにだけは、絶対に負けるわけには行かない。戦う相手は将軍じゃない、それでいいのかと問う自分自身だ。
「ふぅ……」
「許されないことをしたな……私達は」
「……えぇ」
そして――長い喧騒と議論を経て、ようやく静寂を得た純白の部室。その沈黙を初めに破ったのは、彼らを連れて部室にやって来ていたという、伊葉さんと古我知さん。
彼らはこの件に強く責任を感じているらしく、二人とも周りと目線を合わせずにいた。互いを見合わせ、沈痛な面持ちで俯き続けている。
これくらい、なんてことない。人命救助が俺の仕事なんだから、ここは俺に任せとけ!
――と、元気付けてやりたいのは山々なんだが……。
「お、おい! 頼むからそろそろ……!」
その前に、このロープを解いて緊縛プレイから解放して貰わないと。いい加減、腰の辺りが苦しくなってきたし……!
「あら、龍太君。それをお願いするより先に、私に何か言うことがあるんじゃない? 言わないと……じ、自宅までおんぶの刑よ……」
「それとは別に、聞かないけん話もあるけんな。あのチンチクリンと何をしとったとか、何をしとったとか、何をしとったとかっ! 白状せんと、でぃ、でぃ、でぃーぷ……き……刑……やで……」
「も・ち・ろ・ん、答えて頂けますわよね? もし答えられないとおっしゃるなら……ワタクシが今夜一晩中、一滴残らず……!」
「……梢がやると先輩が死んじゃう。だ、だから、その……ボクが……」
だが、そんな状況であるにも関わらず。俺が死にかけているにも関わらず。彼女達は、縄を解く気配を微塵も見せずにいた。
――むしろ、これ幸いと目を光らせ、野獣のような笑みすら……!?
何を言っているのか要領を得ない発言の多さが、得体の知れない恐怖を引き立てていた。伊葉さんと古我知さんに至っては、我関せずと言わんばかりに、目線どころか首まであさっての方向を向いている。
ちょっと待て。詰みじゃないの? 詰みじゃないのコレ?
――嘘だと言ってよ誰か!
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