第169話 嘘だと言ってよ誰か
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やで」
「ワタクシは納得行きませんわ! あんな子供に色香で負けるなど、断じて認めないざます!」
「……自業自得……」
しかも、着鎧甲冑部の女性陣もやけに厳しい。誤解だというのに。
伊葉さんと古我知さんも、バツが悪そうに俺から目線を逸らしている。「その件については僕らじゃどうにも……」という声が聞こえて来そうだ。
――そう。
俺は今、海老反り状に縛られるというマニアックな体勢で拘束されたまま、部室の隅に追いやられているのである。みんなが席につき、お茶を嗜みながら決闘について議論している間、ずっと。
いや、俺にも非はあったと思うよ? やらかした、とは思うよ? だからってさ、三時間もこの状態で放置はヒドイって思うんだ。もう夕暮れだよ? 部活が終わって皆が帰ってる時間帯だよ?
一国の王女を男呼ばわりした挙げ句、胸を触って執拗に迫り、逃げれば息を切らせて追い掛ける。言われてみれば、俺が犯した罪は確かに重い。
だけど、しょうがないだろう。あんな格好で王女様だと判別する方が無理な話だ。将軍に問答無用で縛り上げられて、ダウゥ姫が女であると約二時間に渡って力説されても、しばらくは納得が行かなかった。というか、整理が追いつかなかった。
「とは言え、私とはぐれていた姫様を連れて来てくれたことには感謝せねばなるまい。まさか、姫様の居所を尋ねている最中に貴殿と会うことになるとは思わなかったがな。――では、今日のところはこれで失礼する。決闘の当日に、また会おう」
そんな俺を完全放置するように、ジェリバン将軍は荷物のトランクを抱え上げると、ダウゥ姫の肩に手を置き踵を返す。
「……良き少年でしたな。僅かでも、息子に会えたような――そんな気がしてなりません」
「……オレ、わかんねぇ……わかんねぇよ……」
――錯覚なのだろうか。一瞬、彼女が名残惜しげにこちらを見たような気がしたのは。
「将軍殿。貴殿は――それで構わないのか」
「――私は言ったはずだ。『想い』こそが、『命』なのだと」
その時。白い扉を開けて部室を出ようとしたジェリバン将軍の背に、伊葉さんが訝しむような声色で声を掛ける。その問いに、彼は振り向かずに断じるのだった。
姫君の想いを踏みにじるならば、生きていても仕方ないのだと。
それだけを言い残し、将軍は部屋から立ち去っていく。彼を追うダウゥ姫が、一瞬振り返って全員に「あっかんべー」をした時、その扉は大きく音を立てて閉じられたのだった。
――『想い』が『命』、か。殊勝なお話だが……気に食わない。死んじまったら……それで全部おしまいじゃないか。みんなが死んだら……その気持ちは、いつか消えちまうんじゃないのかよ。
正しくなんかなくたって、俺はそんなの認めたくない。認めた
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