第169話 嘘だと言ってよ誰か
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いたような単なる友人などではなく、彼女にとっての兄代わりであり、初恋相手だったのだ。そして、ジェリバン将軍の息子でもあるのだという。
十一年前、瀧上凱樹にダスカリアン王国が滅ぼされた時に殺されたらしい。最期まで勇敢に戦った――と、父であるジェリバン将軍は語っていた。余談だが、俺とは瓜二つなんだとか。
王族という浮いた身分が災いして、気兼ねなく付き合える友人がいなかったダウゥ姫にとっては、生前は気さくだったというテンニーンの存在はまさに希望だったらしい。彼や両親が生き延びていれば、彼女は今ほど激しく俺達を憎んではいなかったのかも知れないな……。
「――だからこそ。だからこそ、オレはお前達を許すわけには行かねぇんだ! 特にそこのジャップ! テンニーンの皮を被ってオレを騙そうったって、そうは行かねぇ。テメェなんか、ワーリにボッコボコのギッタンギッタンにされちまえばいいんだ! オレは日本人の情けなんか受けねぇぞっ!」
「なっ……なんやてぇ〜! このチンチクリン、言わせておけばッ! あんたんとこの将軍なんか、龍太に掛かったらグチョグチョのゲチョゲチョなんやけんなっ!」
「ざっけんなっ! ワーリならジャップなんざベキベキのバキバキだっ!」
「なっにをぉ〜っ! 龍太なら将軍なんかモチョモチョのクチャクチャやっ!」
「ズコズコのガチムチだっ!」
「バコバコのムキムキやっ!」
……という俺の思案を余所に、席を立った矢村とダウゥ姫が何やら口論を始めている。途中から日本語じゃなくなってる気もするが、あんまり水を差すのも難だし今は止めない方がいいのかもな。
肌が濃い者同士、波長が合う可能性も無きにしもあらず、だし。
「あら? そういえば鮎美先生はまだいらっしゃらないのかしら?」
「……お姉ちゃん、昨日から徹夜で何かの研究してた。多分、今頃は地下室で寝てる……」
「そっかぁ……最近ちょっと疲れてるような雰囲気もあったし、今は寝かせておいた方がいいわね。この件のことは、後で教えてあげればいいし」
そんな矢村とダウゥ姫の喧嘩をほったらかしている三人が話題にしているのは、この着鎧甲冑部の顧問にして養護教諭の資格を持っている、四郷鮎美先生だ。四郷のお姉さんであり、瀧上凱樹の元恋人という経歴の持ち主でもある。
一年前に彼の束縛から妹と共に逃れた彼女は、この松霧町で保健室の先生というポジションを手に入れ、着鎧甲冑部の顧問を兼任するようになっていた。今ではここの地下に造った研究室にて、それまで瀧上に利用されてきた科学力を活かし、人々の役に立つ発明品を作り出すことにも精を出している。
……素晴らしいことさ。いつも俺を実験台にさえしなければ。
「ハァ、ハァ……やるじゃねーかテメェ。ジャップのくせに」
「ヒィ、ヒィ……へへ、アタシは龍
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