第168話 姫君は大変な爆弾を投下して行きました
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
子に育つというのか。
「だ、騙されない! オレは騙されないからなっ! いくらテンニーンの顔で優しくしようったって、オレはごまかせないぞっ! ジャップなんかに、騙されるもんかっ!」
「あーもう、頼むから大人しくしてくれ! ご近所さんに迷惑だから!」
「ムグ、ムググ〜っ!」
いろいろ彼について確かめたいところではあるのだが、こうも冷静さを欠いていては話にならない。俺は後ろから抱きしめた状態で、彼の口を掌で塞ぐ。
少々危険な絵面だが、今は手段を選べない。この子の暴走が収まるまでの辛抱だ。
俺はジタバタと暴れる少年の動きが小さくなっていくことを確認し、ゆっくりと口から手を離した。どうやら、とうとう疲れ果ててしまったらしい。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「……ごめんな、手荒なマネしちゃって。悪いことをしたと思ってる。だけどね、怪我してる時に、あんな無茶はしちゃいけないよ。さ、早く行こう? お父さんやお母さんも、きっと凄く心配してる」
その姿にチクリと罪悪感を植え付けられた俺は、彼と目線を合わせるために片膝をついていた。俺の手を両肩に置かれている少年は、観念したように目を伏せている。
ようやく落ち着いてくれたか。
――と、俺は安心した……のだが。
「……せよ」
「えっ?」
「……返せよ。だったら、返せ。返せったら、返せよッ!」
「な、何をさ……?」
「返せよォッ! だったら返してよッ! 父上も、母上も、テンニーンも……国のみんなも、返してよ……みんな返してよぉぉおおぉッ!」
突如、彼は目尻に大量の雫を一瞬で貯え――けたたましい叫びと共に、それら全てを一気に頬へ伝わせる。
そして俺の襟を両手で掴みながら、縋るような悲痛な声を上げ――泣き叫ぶのだった。
「――ッ!」
……父や母、そして「テンニーン」を返せ。彼は、確かにそう言っている。
どのような経緯から、このように泣き叫び、訴えているのかはわからない。わからないが、この言葉だけでも彼が置かれている環境というものが、ほんの少しだけ見えてきた。
この少年には――両親がいない。そして恐らくは、テンニーンという友人も……。
それを踏まえて考えてみれば、俺の発言がいかに地雷だったかは容易に想像がつく。単なる迷子か、早咲きの中二病辺りかと思っていたが――とんでもない思い違いだったようだ。
「……そっか。ごめんな、なんか」
「うるせぇうるせぇうるせぇっ! お前なんか、お前なんか大嫌いだっ! こいつ、こいつっ、こいつぅうっ!」
掛けるべき言葉を探し、思案に暮れる俺を責め立てるように、少年は両手の拳を何度も俺の頭に叩き付ける。だが、痛みは微塵もなく、ポカポカと軽く当たる感覚しかない。
先程までの身体能力
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ