第167話 変換ミス再び
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堵していた。
「おーい、麦茶持ってきたぜぇ」
「あ、悪いな兄貴。そこに置いといてくれ」
「あいよ。……しかしまぁ、随分とお前も出世したもんだ。着鎧甲冑の正規資格者の中で、初めて両方のライセンスを同時に取ったんだってなぁ。しかも、最年少ときた」
「救芽井達が面倒見てくれたおかげさ。それにどっちも補欠合格だから、ニュースにもなってないし」
「補欠だろーが何だろーが、合格は合格さ。兄ちゃん鼻が高いよぉ」
「はは、そいつはどうも」
俺は兄貴が持ってきたコップを手に取り、苦笑いを浮かべながら静かに口を付ける。少年もやはり喉が渇いていたらしく、派手に喉を鳴らして麦茶をがぶがぶ飲んでいた。
「で、その娘は誰なんだ? 新しい彼女?」
「ムグッ!? ……ゴホ、ゴホ!」
「ちげーよ、公園で転んで怪我したから連れて来た――って、いつまで女子呼ばわりしてんだ。ほら、君もそんなに慌てて飲んだらむせるに決まってるだろ。別に麦茶は逃げないんだから、落ち着いてゆっくり飲みな」
「ハハハ、こうして見ると、お前もお兄ちゃんになったって感じがするぜ。ちょっと前まで俺にべったりの坊主だったのになぁ」
「そこまで甘えられる歳じゃなくなったからな。まぁ、何でもかんでもこなせるくらいの大人になれたわけでもないけど」
「んー……そうかぁ? 結構イイ男になったモンだと見てるぜぇー、俺は」
そんな時、咳込む少年の背中を撫でる俺に向かい――兄貴は、どことなく暖かさを滲ませた視線を送っていた。例えが変になるが、さながら子供を見送る親のような表情を浮かべている。
一煉寺家の家訓に沿い、超人的な身体能力を身につけている兄貴の力なら、俺が今まで死ぬ思いで解決してきた事件や事故も、きっと楽勝だったのだろう。それでも俺に任せることで、ここまで育てるつもりでいた……のかも知れないな。
「……兄貴が三年前、俺に戦うことを托さなけりゃ、こうはならなかったかもな」
「あー、まぁ、托すっつーか……アレはなぁ……」
「ん?」
「へへ、まぁいいじゃねーかそんなこと。結果として、お前はこんなに偉くなったんだ。それは間違いなくお前の力だぜ。俺なんて関係ねぇさ」
だが、兄貴はあくまで全て俺の力ありきの結果だといい、ゲラゲラと笑っている。三年前、俺が救芽井のための戦いに向かった件については、珍しく歯切れの悪い反応を示していたようだったが……?
「まさか。兄貴の二年前のシゴキがなけりゃ、こんなとこまで絶対――あれ」
「どうした?」
「コップ……どれだったっけ」
その様子を不審に思い、手元を見ていなかったせいだろうか。俺と少年に渡された二つのコップ。その区別が付けられなくなってしまっていたのだ。
無意識にテーブルに置いていた上、互いの飲んだ量もほぼ同じで、
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