第2章 真紅と黄金の激突
第166話 とあるオレっ娘の暴走注意報
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
突然、敵愾心を剥き出しにして突っ込んできた謎の少年。彼はやけに威勢のいい啖呵を切ると、俺目掛けて一気に襲い掛かり――
「いでっ!」
――躓いて転んでいた。
「……」
「……」
そして訪れる、沈黙。
俺は何が何なのか状況が読めず、目を丸くして固まり――俯せに倒れてしまった長髪の少年は、顔を上げるとわなわなと震えていた。鼻先まで、茹蛸のように真っ赤になりながら。
その状態でしばらく間を置いた彼は、慌てて跳ね起きると、再び大口を上げて叫び始める。
「き、きき、貴様〜! よくもやりやがったな〜! オレを本気にさせるつもりかッ!?」
「え? お、俺は別に何も……。それより、怪我はないか? 随分ハデに転んじまったみたいだけど……」
「う、うっ、うるせぇぇえ! 敵の施しは受けねぇっ! オレは今こそお前を倒し、一人前のダスカリアンの戦士になるんだっ!」
敵の施しとか、一人前の戦士だか、よくわからない話ばっかりだな……。ちょっと心配して近寄ってみたら、いきり立つ猫みたいに威嚇してくるし。
そういう遊びが流行ってるんだろうか? でも、ただの遊びにしては眼が真剣過ぎるし……?
「うーん……って、あ! よく見たら膝、擦りむいてるじゃないか!」
「あ、ち、違う! これは、その――ハ、ハンデさ! 片足が怪我してたって、お前なんかに負けねー……い、いててっ」
「ほらもー、やっぱ痛いんだろ? 無理しちゃダメだ、まだ子供なんだから。ほら、こっち」
「きゃっ! ちょ、な、何すんだお前っ! やめろ、や、やめろっ! はーなーせー!」
ま、今はそんなことはどうでもいい。とにかく怪我人を見つけた以上は、レスキューヒーローであろうがそうでなかろうが、この町の住民として放ってはおけない。
俺は暴れる彼を無理矢理抱き抱え、公園の隅にある水道へ向かう。――抱え上げた瞬間、女の子みたいな声が出たような気がしたが……まぁ、気のせいだろう。
「ひゃっ! つ、つぅっ……!」
「我慢しなよ。ばい菌が入ったら大変なんだから」
「い、痛くなんか……ねぇよっ……」
蛇口を捻り、綺麗な水が滑らかな曲線を描いて噴き出していく。その浄化を擦りむいた膝に受け、少年は痛みに顔を歪めた。
……どういう経緯で俺に突っ掛かって来たのかは知らないが……見たところ、保護者や友達は近くにいないようだ。迷子なのだろうか?
だとしたら、早く交番に連れていってあげないと。きっと、ご家族も心配してる。
「はい、もう大丈夫。俺ん家がすぐそこだから、絆創膏貼ってやるよ。ところで、君は一体どこから来たんだ? この町に住んでる子じゃなさそうだけど」
「ふ、ふん。うるせぇよ、子供扱いすんじゃねぇ。オレはもう十六だぞ!」
「え……あはは、まさか。
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ