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フルメタル・アクションヒーローズ
第165話 無断出動と開幕タックル
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待ちなさいこらぁ〜ッ!」

 ――ゆえに、今日も俺は逃げるのだ。
 まだ俺が住んでいるうちに、この町を少しでも危機から遠ざけるために。

「わりぃなー! ちょっとだけ見回ったらすぐ帰るから、先に部室でお茶でも飲んで待っててくれー!」

 憤慨して子供っぽく両手を振り回す救芽井に、俺は手刀を縦にして「ゴメン」とジェスチャーを送る。そして生徒達の脇を駆け抜け、人通りの少ない体育館の裏手へ向かった。
 そこで俺は、人知れずヒーローへの変身を遂げるのだ。

「着鎧甲冑ッ!」

 腕輪に入力された音声が、封じられていた赤い帯を外界へ導いていく。その帯が俺の全身に絡み付き、やがて光に包まれ――着鎧が完了した。
 そこから校舎の屋上へ一気に跳び上がると、俺は周囲の町並みを見渡し、些細な異変も見逃すまいとバイザー越しに眼を光らせる。普段の景色や日常を見慣れている分だけ、異常の発見が早い……という点は、数少ない俺の長所だ。

「どこかで、何かが起ころうとしてる――そんな気がしてならねぇ。なんなんだ、一体……?」

 自分でもわからない、この無断出動の動機。その実態を追い求めるように、俺は屋上から住宅街へ跳び移り、パトロールを開始した。
 馴染みの商店街、交番、町外れの畑を次々に回っていく。俺自身にとっては庭も同然の松霧町だが、だからといっていつでも不測の事態に完璧に対処できるわけではない。万に一つも町に危険が及ばないようにするためなら、例え根拠がない出動であっても欠かしてはなるまい。

「おっ、ありゃあ龍太じゃねーかお巡りさん!」
「あーホントだ! なんだかいつもより精が出てるって感じですねぇ。おーい、いつもありがとうねー!」

 そんな時。小さなビルの屋上に降り立つ俺に向け、下にいる二人の男性から声援が送られてきた。
 一人は、今朝の登校の際に絡んできた八百屋のおっちゃん。もう一人は、武章さんに妙なことを吹き込んだ、お喋りでお調子者の若いお巡りさんだ。
 二人共、屋上に立っている俺を見上げ、眩しい笑顔で思い切り両手を振っている。そんな彼らに対し、俺は小さく片手を振って挨拶を返した。
 一年前にここでヒーローを始めた頃は、こっちも両手をブンブン振って応えてたんだが――そんなことやってると、正体がバレかねんからな。今では力一杯応えてやりたい気持ちを堪え、敢えてスマートに取り繕っている。

「おーおー、余裕っぽい反応しちゃって。にしてもここ最近、龍太君って振る舞いが大人っぽくなってきてますよねぇ。顔も、結構お兄さんに似てきてるし」
「そーだなぁ……しかしあいつ、高校卒業したらどうする気なんだ? やっぱりお兄さんみてぇに上京しちまうのかねぇ……」
「寂しくなりますねぇ……。ま、その時は皆笑顔で送ってやりましょうよ」
「ハ
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