第164話 松霧町の日常にて
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…なの、だろうか。
矢村。俺の一年間を見てきたお前なら、俺がそんな奴だということもわかっているはずだ。それでも、俺を必要としてくれるのだとしたら、俺は――
「なぁーにをシケたツラしてんだ龍太よォ! それでもお前、この町のヒーローかァ? 男ならどんな根拠のねぇ決断でも、いざとなったらドンと構えて突き進むもんだぜ!」
「――え?」
「ちょ、ちょっとあんたッ!」
「……あ、やべ。ま、まぁほらアレだ。この町のヒーローも、そ、そんなこと言ってたぜぇ。もしかしてお前のこと、将来の後輩だとか思ってんじゃ、ね、ねーの?」
――すると、おっちゃんが「ヒーロー」という単語を出した途端、おばちゃんが切羽詰まったような声を上げた。何だ……? 途中から、何か言おうとしていたことを変えたみたいだったけど。
「ほ、ほらそんなことよりお前ら、もう学校が始まっちまうんじゃねーか? 急いだほうがいいぞ」
「あっ……そうだった! 行こうぜ矢村!」
「え……う、うん! そ、それじゃ行ってきまーす!」
「あ、ああそうだね。賀織ちゃーん、気をつけて行っておいでー!」
だが、その疑念を断ち切るようなおっちゃんの発言で、俺は我に帰る。刹那、俺は矢村の手を引いて八百屋の傍を飛び出した。
そして、矢村とおばちゃんの挨拶を最後に、俺達は商店街を抜けて住宅街へ出る。
後は、ここから矢村の家を通り抜ければ、松霧高校まで一直線なのだが……。
「フーッ、フーッ……! どこに隠れとんやぁ、一煉寺龍太ァ……!」
「もー、お父ちゃん何やっとんの。龍太君の頑張りを認めて、賀織のことを認めるって話はどうしたんや」
「それとこれとは全くの別問題じャア! あいつを認める前に父として、一発殴らにゃ気が済まねぇ!」
――鬼気迫る表情で、玄関前で仁王立ちしている一人の男性が、それを阻んでいた。
角刈りの頭に、親父に劣らぬ体格。――そして、その威厳に溢れた顔立ちに反する、可愛い熊がプリントされたパジャマ。
矢村の父さん……武章さんだ。あの外見から察するに、ずっと寝間着のまま俺達を血眼で待伏せているらしい。
その傍には、恰幅のいいおばちゃんが呆れ顔で佇んでいる。矢村の母さんだな。
――しかし、俺の頑張りってどういうことだ? あのご両親の前で、特別何かをしたような覚えはないが……。
「前々からああして怖い顔してたような気はするけど……なんだろうな、ここ一年間はさらにオーラに気迫が込もってる気がする」
「もっ、もぉ……お父ちゃんのバカッ!」
さすがに両親のあんな姿は見られたくなかったのか、矢村は顔を真っ赤にして文句を垂れている。あの怒りようは……まさか、あの、矢村とのファーストなアレがバレた……とか?
となるとソースはや
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