第163話 周りの女は鬼ばかり
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まう。……にしても、とうとう救芽井達にもあだ名を付けやがったか。
しかも、たまに「勿体ない!」とか叫びながら、クリームの付いた俺の指までしゃぶり出すんだから困ったもんだ。こすりつけるように肌をなぞる舌の動きには、外見に合わない妖艶さも感じられる。
「とにかく私も仕事に戻りますがっ! イッチーさんもほどほどにしてくださいねっ! あと顔拭いてくれてありがとうございましたっ!」
しばらくして、ようやく綺麗な顔に戻った西条さんだったが、ご機嫌ななめなのは相変わらずのよう。ムスッと可愛らしく頬を膨らませながら一礼すると、フラヴィさんの後を追うように走り去ってしまった。
……やれやれ。暴れるだけ暴れて帰っちまいやがった。ま、彼女らしいっちゃらしいけど。
さて、もうそろそろここを出ないと、松霧町行きの新幹線に間に合わねぇな。名残惜しい気もするが……しばらくお別れってわけだ。
長かった着鎧甲冑の試験勉強も終わったし……まさに「俺達の戦いはこれからだ」って感じだぜ。帰ったら親父にも報告しとかねぇと。
「……よし! 出発の時間も近いし、行こうぜ皆!」
というわけで、俺は後腐れなく故郷に帰るべく、明るい声色で皆に呼び掛けた――のだが。
――なぜか、皆して表情が暗い。ていうか、怖い。なんで全員俺をジト目で睨んでんの!?
「――賀織。私ね、龍太君は自重って言葉を辞書で調べた方がいいって思うの」
「奇遇やね、樋稟。アタシも全く同じこと考えとったわ」
「お二方、ぬるいですわね。ワタクシはどうやっても他の女性に目移りできないように、メイド服で調教し尽くす方法しか考えておりませんでしたわ」
「……梢は調教『され』尽くすことしか考えてないでしょ……涎垂れてる……」
俺が何をしたというのか。何を誤ればこうなるのだろうか。
その訳を彼女達に問える勇気も、それを悟れる聡明さも、俺にはない。
ならばその先に待ち受けるのは、仁義なき説教のみ。
新幹線に乗り込んでから松霧町にたどり着く瞬間まで、俺は休むことなく彼女達の叱責地獄に晒されるのであった。
――なんでっ、俺……ばっかり……。
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