第162話 女性、それ即ち恐怖の権化なり
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、なっ……!」
先程までは、ぎこちなくとも社交的な笑みを浮かべて接していた救芽井だったのだが……気が変わったのか、俺が蔑ろにされた途端に口調が刺々しいものに激変してしまった。
加えて、その瞳も以前とは打って変わり、悪に立ち向かうヒーローのような、毅然たるものへと変化している。その威勢に気圧されたのか、彼女の手を無理矢理引こうとしていた貴族様は、思わずのけ反ってしまっていた。
その光景を目の当たりにして、後ろでモゴモゴと暴走していた矢村も、ようやく静かになる。フンスと鼻を鳴らす彼女の後ろでは、四郷がやれやれとため息をついていた。
こういうやり取りは、今までに何度もあった。その繰り返しに辟易してしまった、というところなのだろう。
いつもなら、ここで金持ち側が泣き声を零しながら帰っていく流れだ。この貴族様も救芽井の敵意にビビってしまっている様だし、そうなる可能性はかなり高い。
――だが、今回だけは。いつもとは少し、違っていた。
「よぉーう、旦那じゃねぇか。相変わらず無自覚に女侍らせてんなー……あ?」
銀髪のショートヘアに、青い瞳。ボーイッシュな雰囲気とは裏腹に、ぶるるんっと出るところが出ている、長身のフランス人美女――フラヴィさん。
「あらあら、お取り込み中ですか? 一煉寺様。うふふ」
ウェーブの掛かった、金髪の艶やかな長髪を彩る、エメラルドの瞳。穏やかな微笑みの裏に、フラヴィさんを凌ぐ威厳を秘めた麗顔。そして、ぷるんっと可愛く揺れる胸がチャームポイントのアメリカ人――ジュリアさん。
……そして。
「ふぅー……お待たせ致しましたわ、皆様。ようやく面倒なブタ共の調教が終わったざます。――ん?」
濃い茶色で描かれた、流麗なる川のようなストレートロング。翡翠色に煌めく、鋭い瞳。一メートルを越える、超凶悪にして頂点を極めし巨峰。扇情的なまでに艶やかな曲線を描く、魅惑のボディ。
そして、いかなる汚れや下賎な者も寄せ付けまいと輝き、圧倒的な妖艶さを漂わせる絶世の美貌。
その全てが集約された、彼女こそが――久水梢。俺の幼なじみにして、久水財閥を従える敏腕秘書。
以上の彼女達三人が、あろうことか――同時にこの場に合流してしまったのだ。救芽井に言い寄る貴族様に絡んでいた、俺の前に。
――女性は時として、男性の理解を超越した恐ろしさを発揮する。貴族様を圧倒した救芽井の威圧感や、あの団結力がいい例だろう。
そんな覇気を暴力的なまでに備えた三人が。俺に対しては割と良くしてくれている三人が。この状況で、鉢合わせした。
その現実が貴族様にもたらす、凄惨なる結末。それを予感してしまった俺には、もはや耳を塞いでうずくまることしか出来まい。
「……ヘェ〜」
「…
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