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フルメタル・アクションヒーローズ
第162話 女性、それ即ち恐怖の権化なり
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齢は五十代くらいだろうか。
 やけにきらびやかな格好で、いかにも中世の貴族って風貌だが……あ、思い出した。確かこのオッサン、昨日の事故で転がってきた人達の中にいた一人だ。

 昨日の今日でここに顔を出す辺り、どうやら怪我は全くなかったらしい。助けた身としては、嬉しい限りだ。手を握られている救芽井は若干困り顔ではあるが。

 ……しかし、あれだな。仮にも婚約者の立場である俺が、ここで黙って見ているのは問題だろう。
 彼のように、救芽井エレクトロニクスに取り入ろうと頑張ってる人達にとっては、俺は相当な嫌われ者らしいが……やるしかない。

 俺は彼女の手を掴んでいる貴族様の大きな拳に、ゆっくりと掌を乗せる。その途端、先程まで満面の笑みを見せ付けていた貴族様の表情が、瞬く間に不機嫌なものに変貌してしまった。

「失礼。樋稟お嬢様がお困りのようですので、どうかその辺りで……」
「な、なんだ貴様は。ふざけた格好をしおって。庶民風情が、気安く私に触れるでない!」
「……やめてください。龍太君は、あなたが思うような人ではありません」
「りゅう……? そうか、貴様があの……!」

 次いで、唾でも飛び散りそうな勢いで罵声が飛び出して来る。後ろでは、突っ掛かろうと暴れる矢村の口を、四郷がチョークスリーパーをキメながら塞いでいた。
 ……よくあることだ。中流家庭の出身でありながら、救芽井樋稟の婚約者であり、「救済の超機龍」の持ち主でもある。そんな俺が、こういう場で金持ち連中からのやっかみを買うことは、今に始まったことではないのである。

 救芽井から「救済の超機龍」を貰ってから、一年間。俺は地元の松霧町(まつぎりちょう)を拠点にした上で、色々な場所でレスキューヒーローとして活動してきた。
 こうして東京の支社に来ることもままあるし、訓練の一環として外国にだって出向いていた。そうなれば救芽井に付き合って、上流階級の人間と絡む機会も増えるわけで。
 救芽井エレクトロニクスの名声や、救芽井の美貌を求める彼らからすれば、そんな俺は邪魔者でしかない。ゆえに俺は、こういう人達からはしょっちゅう憎まれ口を叩かれる羽目になるのだ。

 たまには、以前助けたイギリスのお嬢様のように、認めてくれる人もいるにはいるんだが……どうも、嫌われる時は徹底的に嫌われてしまうものらしい。

「樋稟お嬢様! こんな薄汚い小僧に騙されていては、救芽井エレクトロニクスの名に傷が付いてしまいますぞ! さぁ、私と共に参りましょう。美丈夫で有名な私の息子も、あなた様に会いたがっておりますゆえ……」
「結構です。あなたの御子息がどのような美男子であれ、私は興味を持てません。子は親の背を見て育つもの。――あなたの背を見て生きてきた御子息と、話が合うとは思えませんわ!」
「な
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