第162話 女性、それ即ち恐怖の権化なり
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「懐かしいなー、昔は兄貴と一緒に近くの本屋に買いに行ってたんだっけ。打ち切りになっちまったのが惜しかったんだよなー」
「あっ、ん、はぁああ……! イッ、あ、あぁあ……!」
「ははは、あったあった、この超展開。兄貴と二人で『そりゃねーだろ』って突っ込んで――フブッ!?」
「『そりゃねーだろ』はこっちの台詞やッ! 見てみぃ、鮎子がクタクタになっとるやろっ!」
だが、どうしたことか。この体勢で懐かしの漫画を堪能してる最中に、矢村からいきなりチョップを貰ってしまった。
――そこで俺は、自らの過ちに気づいてしまった。
眼前には、俺の胸元に身を預け、ぶるぶると痙攣している四郷の姿。そう、彼女に迂闊に触れてしまうと、こうなってしまうのだ。
詳しいことは俺もわからないのだが、彼女の姉によると「ビンカンスギテダイスキナリュウタクンニフレラレルダケデイッチャウ病」という皮膚の病らしい。
俺が触れている場合に限り、高熱を発するという何とも奇怪な病気なのだ。桜色の唇を淫靡に震わせ、荒い息遣いで喘ぐ様子からは、えもいわれぬエロスを感じてしまう。頬を染めて、何かに打ち震えるように身じろぎする様は、まるで……。
――だが、病人にそんなヨコシマな感情を抱いている場合じゃない。
「わわ、悪い悪い、うっかりだったよ」
「……先輩は女の敵。何度こうして寸止めされたか……」
「寸止め……? ま、まぁ今回のところは勘弁してくれよ。昔の漫画が懐かしくてつい、さ」
「……今度、一緒に漫画を読むと約束するなら考える……」
俺はすぐさま、彼女を静かにソファーに寝かせてその場を離れる。すると、真っ赤になっていた彼女の顔はみるみる元通りになっていき、息もあっという間に整ってしまった。
――これで治るんだから不思議だ。確か、四郷の心理状態が関係しているらしいんだが……何がスイッチなのだろう?
「全く……こんなスケコマシ君が今や世界的なヒーローなんだから、世も末よね。賀織」
「同感やでー、樋稟。去年のクリスマス頃なんか、自分が命懸けで助けたイギリス貴族のお嬢様に、英語で逆プロポーズされても『ワターシエイゴワカリマセーン!』とか言い出して逃走しよったもんな」
……つーか、何か後ろでものすごく俺が罵倒されてる気がするぞ。それにお前ら、いつから名前で呼び合う仲になったんだ。
女子の団結力って……怖い。皆が黒いレディーススーツなのに対して、俺だけが赤くて古臭いユニフォームなのも相俟って、強烈な疎外感を植え付けられてしまいそう。
「ところでさっきから聞こうと思ってたんだけど、久水先輩は何処に行ったんだ? 皆ここにいるって聞いたんだけど……」
――そこで俺は、一人の女性の話題を出した。あの恐ろしい団結の枠に収まっておら
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