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フルメタル・アクションヒーローズ
第160話 存在しない女
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「ああ。あんなに炎に囲まれてるってのに、全然取り乱していない。手すりにまで追い詰められてるって事態に気づいてないのか……!?」
「いや、そんなはずはねぇが……とにかく、ほっといたら火炙りにされちまう。あの勢いの炎に迂闊に飛び込んだら、着鎧甲冑だってタダじゃ済まねぇし……旦那! こうなりゃ飛び降りさせて、マントで受け止めるしかねぇ。手伝いな!」

 女性客の背後を包んでいる猛火は、数メートル以上の高さに及んでいる。
 フラヴィさんの言う通り、上の階に飛び乗って助けに行くにはリスクが高すぎるだろう。熱を帯びたスーツで彼女に触れたら、深刻な火傷を負わせてしまう可能性もある。

 それならば、彼女に手すりから飛び降りて貰い、下の階にいる俺達で受け止める方が安全――ということだ。
 俺はフラヴィさんの判断に強く頷くと、彼女が手にしていたディヴィーゲマントを引っつかみ、ジュリアさんの時と同じ要領でマントを広げる。

 女性客側に飛び降りる勇気を要求することになってしまうが、これなら確実だ。俺達がいる階は、まだそこまで火は回っていない。上の階に向かうよりは、安全に女性客を保護できるだろう。
 そうすれば、後はフラヴィさんの酸素タンクでディヴィーゲマントをボートにして、三人でそれに乗り込んで脱出するだけだ。

「そこのあんた! このマントが見えるか!? 怖いかも知れないが、ここに向かって飛び降りてくれ! 絶対に、俺達で受け止めるから!」

 得体の知れない女性客だが、助かりたい気持ちがあるなら、誘いに乗ってくれるはず。俺は彼女に自殺願望等がないことを祈りつつ、マントを靡かせて救出準備があることを強調するように叫んだ。

「……」

 ……だが、女性客は何の反応も示さない。すぐそこまで火の手が上がっているというのに、興味なさげな視線をマントに向けている。
 生還することを諦めているのだろうか。だが、それにしては全く目が死んでいない。つくづく、得体の知れない女性だ。

「おいっ! 聞こえてんのか!? 怖がんなって、アタイらがぜってぇ助けるからよ! そこにいたらどっちみち死んじまうんだ! 飛び降りさえすりゃ、アンタは絶対に助かる! 絶対だ!」

 フラヴィさんも懸命に説得に掛かっている――が、女性客の反応は相変わらず淡泊そのもの。そうしている間にも、炎はジリジリと彼女に迫ろうとしている。

「くっ……! あのままじゃ助からねぇ! こうなりゃ危険だろうが何だろうが、上の階まで行って引っ張り出すしかねぇぞッ!」
「待ってくれフラヴィさん! 『救済の龍勇者』の耐久力で持つかどうかはわからない。ここは一番頑丈に出来てる俺が行く!」

 俺はマントによる受け止めを諦め、上の階に飛び乗ろうとするフラヴィさんを腕で制止し、一歩前へと進
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