『終わりの始まり編』
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たその時だった、村周辺で唯一木漏れ日が差し込むような日陰と言えるような場所があった事を思い出したのは。
「石の神殿ならどうですか!? 気温が下がっているように感じるし、人の手が入っていないから自然のままだし崩れ落ちた建物であまり太陽の日差しを浴びないからいい感じに日差しが避けられていると思うんです」
「石の神殿ですか……それは盲点でした。確かにあそこならば可能性も……」
顎を手でもちうんうんと頷き唸っている。なんでも知っている村の知識であるオディーリアが可能性あると言っているのだこれはもう正解だと言っていいだろう。ルシアはオディーリアの見解を聞く前に背を向け走り出した。
「ありがとうございました。後は自分で何とかやって見ます!」
オディーリアに礼を述べたのと扉を閉めたのは同時だった。閉じたドアを見つめぽつりと呟いた。
「胡蝶蘭のもう一つの花言葉は【純粋な愛】 ですが純粋過ぎる想いほど危険な物は何と思われます」
それは誰に向けて言った言葉。去ったルシアの背に向けて言った言葉。それとも空間に突如発生したひび割れた硝子の入れ物に入ったヒビのような無数の亀裂。ばっくりと瞼を開ける目のように開かれたそれは黒と白の渦を巻き在るもの全てを飲み込むブラックホールのよう。図書館に収納されている本と言う本を吸い込んでゆく、此処に在るものは全て吸い込んで行くそれに例外などない。背後に現れた亀裂にオディーリアは口角を僅かに上げ。
「やっと迎えが来たようですね。とても退屈で楽しい時間でした」
頬を伝う一筋の液体。彼女は自らの意思で開いた空間の中へと入って行った。無限大の本が収納されていた図書館から全ての本が奪われ、無数にあった亀裂は何事もなかったかのようにゆっくりと閉じられて消え、残されたのはがらんと空っぽになった巨大な本棚だけだったという――。
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