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Secret Garden ~小さな箱庭~
『終わりの始まり編』
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リカ)ではなく本物が何処知れずから本が送り届けられるからだ。

「こちらの本は……」
「オディーリアさん!」

 司書の仕事は主に本を整理整頓すること。世界各国から集められ高いピラミッドとなっている本の山を種類(カテゴリ)ごとに仕分けていること。せっせと一人黙々と仕事をしているとまた良く知る兄妹の兄の方がやって来たようだ。今度は血相を変えて必死の形相だ。何か問題でもあったのだろうか。オディーリアはカタカタと歯車が回る音を小さくたてくるりと身体を動かし、客人と向かい合い静かに訊ねる。

「本日はどのようなご用件で?」
「ヨナが! ヨナが! ヨナ!」

 気が動転しているのだろうか、見振り手ふりで何かを伝えようとしているが主語がはっきりしていない。これでは何を伝えたようとしているのか理解できない。これは一度落ち着かせた方が良いと判断したオディーリアは優しく丁寧に諭すように言った。

「落ち着いて下さいルシア様。さあお水をどうぞ」
「あ、ありがとうございます……んんっ」
「落ち着きましたか? それでは何があったのかご説明お願いします」
「ヨナが何処にいるか知りませんか? 家にまだ帰って来てなかったようなんですが……」
「いえ知りません。……そういえばお昼頃一度来られて花の図鑑を熱心に見ておられました」

 「花の図鑑ってこれのことですよね?」と言いながらルシアは鞄の中から借りた花の図鑑を取り出しオディーリアの前へと置いた。図鑑が置かれるとオディーリアはペラペラとページをめくり、時間の最後の方あとがきに近いページでめくる手を止めた。そこには白と桃色の小さな花の絵が描かれており、上の方に幸福の花と書かれているようだが、この花とヨナが居なくなってしまった事になんの関係があると言うのだろうか図鑑に描かれた絵をじっと見つめているとオディーリアが答えた。
 
「この花の名前は胡蝶蘭(こちょうらん)。花言葉は【幸福が飛んでくる】この花を持っていれば幸せになれると信じられています。ヨナさんはこの花が何処に咲いているのか訊いてきました。そうですね、その時の顔は今の貴方と何処か似た者を感じました」
「幸福の花……? 持っていれば幸せになれる花……? まさか、僕の為にその花を摘みにヨナは!? オディーリアさん。その花は何処に咲いているんですか!?」
「花が咲いている場所ですか? ヨナさんにも説明しましたが、この花は木漏れ日が差し込むような日陰に咲いている花です。灼け付くような太陽の日差しの昨今では咲いている姿を見かける事がなくなり、幻の花と言われています」

 静かに首を横に振るオディーリア。彼女の言う通りだ。砂漠のように熱い太陽の光は植物を枯らし水を涸らし人々の喉を嗄らしている。こんな状況下で幸福の花が育つわけがない……と納得しようとし
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