第159話 たった一人を助けるために
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繋がりやすいのは――西条さんだな。
「――西条隊員、聞こえるか? 船がこのままへし折れたら、衝撃で辺りの皆が巻き添えを喰らっちまう! すぐに分隊全員に、退避するように連絡してくれ!」
『巻き添え……!? りょ、了解です! あの、一煉寺分隊長は……!?』
「あぁ、俺は――」
そこで一瞬だけ言葉を詰まらせ、俺はジュリアさんの方を振り返る。表情こそマスクで見えなかったが、肩を竦めるその仕種には「しょーがねぇ奴だな」というニュアンスが感じられた。
これから出そうとしている答えを、既に把握しているのだろう。その上で、背中を押してくれているのだ。
その心遣いに内心で感謝しつつ――俺は、見透かされている答えを述べる。
「――俺はフラヴィ斑と協力して、逃げ遅れた人を捜す。まだ、誰かがここに居るらしいんだ」
『ッ!? そ、そんな……危険です分隊長! 今の船内に留まったまま沈没に巻き込まれたりしたら、いくら着鎧甲冑でも……! それに、もう分隊長の角には予備の酸素もないはずですッ!』
「まぁな。……悪い、心配かけちまって。でも、俺はそういう西条隊員の優しさがあったから、今こうして誰かを助けに行ける立場に立ててるんだ。それに、ここで逃げちまったら、俺は一生後悔しちまう気がするんだよ」
『で、ですがッ……!』
「大丈夫さ。この『救済の超機龍』のポテンシャルと、隊員皆に鍛えられた俺の力なら、絶対に死なないし死なせない。つーか、俺だって死にたくねぇよ。俺、隊員のみんなが大好きだしな。もちろん西条さんも」
『ふ、ふあぁっ!? ま、ままっ、まぁそこまでおっしゃるなら、分隊長の判断に従いますが……く、くれぐれも無茶だけはなさらないで下さいね?』
「あぁ、絶対生きて帰ってくる! 向こうで待っててくれよ!」
多少渋られはしたが、どうやら西条さんにも、上手く気持ちは伝わったみたいだ。俺は威勢のいい啖呵を切り、通信を終了させる。
心配させちまったのは気の毒だけど、無茶苦茶だろうが無謀だろうが、着鎧甲冑の資格者として、逃げ出すわけには行かないからな……。
にしても西条さん、途中から声が上擦り出してたけど、風邪でも引いたのかな? もう春も終わる頃だし、暖かくなって来てるはずなんだけど……。
「……かぁ〜、相変わらずだなぁ坊やも。樋稟お嬢様が苦労するわけだぜ。呆れて物も言えねぇや」
「救芽井が苦労……? あぁ、そうだな。あいつが付きっ切りで勉強見てくれたってのに、結果が補欠合格だもんな。申し訳ないって俺も思ってるよ」
「そこじゃねぇえー! ……ハァ、まぁいいか。今に始まったことじゃねーし。――それより、夏も言ってたが無茶ばっかしてんじゃねーぞ。さっき私に通信が来たが、なんでもジュリア班も退避命令を出されて、隊長以外は既に船を出てボート
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