第159話 たった一人を助けるために
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パワーを持つ着鎧甲冑といえど、たった二人で十数人の衝突を凌ごうともなれば、その負担は計り知れない。
マントを持つ手と指の筋肉が、はち切れんばかりの痛みと痺れを訴えていた。
「くっ……!」
「……のォオォオオッ!」
しかし、その程度のダメージに屈するわけにも行かない。
俺が歯を食いしばり、ジュリアさんがけたたましい叫び声を上げる瞬間。クッションが斜めに傾き、勢いを吸収されたオッサン達は、全員死なない程度のスピードで海に向かって転げ落ちて行った。
そうして海に投げ出された人達を、渦に巻き込まれる前に回収するのが、本来の一煉寺分隊の役目だ。今は、西条隊員がそれを担ってくれている。
俺とジュリアさんで作ったクッションに衝撃を殺されたおかげで、墜落死を免れたオッサン達が、西条さんに回収されている様子が伺える。なんとか上手くやってくれているみたいだな……。
「ふうっ……。間に合ったみたいだな。それにしても、滑る連中の流れが止まっちまったみたいだが……?」
「船首近くにいた私の部下共から連絡があった。どうやら、今のが船上にいた最後の成金連中だったらしいぜ。少なくとも今のところは、乗員乗客は全員無事なんだとよ。他に船にいる乗客が居るとしたら、火災から逃げ遅れた奴だけだ。今、フラヴィ班が捜索に向かってる」
「そっか……。無事だといいんだが」
「んな悠長なことばっか吐かしてもいられねーぜ? 船首の傾きがかなりヤバくなってきてる。このまま船体が真っ二つにへし折れちまったら、衝撃でこの辺りのプカプカしてる連中全員がボートごとおだぶつだ」
――どうやら、状況は芳しいとはまだ言い切れないようだ。ジュリアさんが言う通り、ここでモタモタしていると、せっかく助かった人達が船体崩壊に巻き込まれてしまうだろう。
既に軋む音は、俺達のすぐ傍にまで迫って来ている。ところどころに大きな亀裂も入りだしたし、もはやいつ裂けてもおかしくない状況だ。
「フラヴィ隊長によりゃあ、白人の女性客らしき奴をゴタゴタの中で一人見掛けたらしいんだが……。そいつを追って船内を隈なく捜しても、全く見付けられずにいるらしい」
「その人さえ回収できれば、乗員乗客は全員生還――ってことなんだな。だけど、フラヴィさん達が見つけるより先に、船の方が割れちまったら……」
「……だな。火の勢いも止まる気配はねぇし……今フラヴィ隊長に死なれちゃ、ポーカーのツケも返して貰えねぇ。とにかく、船の近くにいる連中はレスキューカッツェの隊員も含めて、全員退避させるしかねぇな」
「あぁ。さて……」
ジュリアさんの判断に深く頷くと、俺は無数のボートに詰められた溢れんばかりの乗客達を見遣り、腕輪の通信機に口元を寄せる。
……ここから一番俺達の近くにいて、通信が
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