第1章 ヒーローの凱旋
第158話 ドラッヘンファイヤー、出動
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現在二十六歳独身、彼氏募集中とのこと。
「おうっ! ……だけど、随分と火の手が上がってんな。避難状況はどうなってるんだ?」
『はい。先行したヘリの情報によりますと、救命ボートも救命胴衣も足りてるはずなのですが……船内から吹き出ている火災のせいで、乗客も乗員も酷いパニック状態のようで……。動転する余り、胴衣も付けずに海に飛び込んでいる者も多いのだとか。加えて、船体も徐々に傾き出している模様です』
「……ひでぇ。ディヴィーゲマントが多めに配備されてて良かったよ。救命ボートを取りに行くより、こっちで広げちまった方が早いもんな」
『えぇ。全員で一斉に展開すれば、胴衣なしで海に落ちた人数分は拾えるはずです。他の乗員や乗客も、低体温症になる前にマントを補充すれば補えるでしょう。その間に、他のメンバーで火災の鎮火に向かうのが得策かと』
粗暴な言葉遣いが際立つフラヴィさんとは違う、穏やかな物腰と透き通るような囁き。
その声の主は、アメリカにある救芽井エレクトロニクス本社から出向してきた、「レスキューカッツェ」の副隊長。ジュリア・メイ・ビリンガムさん、二十四歳。
救芽井エレクトロニクスが創設された当初から、テストパイロットとして着鎧甲冑の量産開発に協力していたというベテランヒーローだ。
彼女達二人は今、俺が乗っているヘリの両脇を挟んで飛行中の、残りの二機に一人ずつ乗っている。それぞれが、ヘリに乗っている他の隊員達を統率する分隊長となっているのだ。
そして俺も、今回は暫定的にその立場に就いて活動することになっている。これまでも、彼女達とこうして一緒に出動することが多かったのが、その理由だ。
センスの古い真っ赤なユニフォームとマントを纏う俺の背には、似たような格好をした女性が数人。
個人の格闘能力が何より求められる「G型」とは違い、「R型」は身軽さが強力な武器となっているらしく、「レスキューカッツェ」の隊員は全て女性で構成されているのだ。
彼女達の制服はデザインこそ俺と同一のものだが、色調が純白で統一されている、という相違点があった。警察用の「G型」もレスキュー用の「R型」も、俺以外の資格者は全員このユニフォームなのである。
――つい先日、俺は着鎧甲冑の所有資格に合格し、事実上の最年少資格者になった。しかも、「G型」と「R型」の両方の試験に合格した、初の新人ヒーローとして。
……にも関わらず、この件はマスコミには公表されておらず、世間でも俺のことはこれっぽっちも話題にされていない。
着鎧甲冑の資格者が国内から輩出された、ということだけでも号外が出る程の大ニュースだというのに。
理由は簡単。
どちらもボーダーラインギリギリの「補欠合格」だったため、授賞式が一年間延期されることになったからだ。
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