第156話 古我知剣一の戦い
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再び無音の空間に戻された練兵場に、ジェリバン将軍のくぐもった声が響き渡る。呟くような小声でさえも、地響きのように広がっていく程の威厳が、彼の全身に纏わり付いていた。
その金色に煌めく右腕には、ドリルのように回転している小さな銃身が装備されていた。
肘鉄をかわされた場合、至近距離で連射を仕掛けるつもりでいたのだろう。しかし出番が最後まで来なかったためか、今ではその回転数も減少しつつあった。
そして銃身の回転が完全に停止し、ジェリバン将軍が構えを解いた瞬間。
「――この勝負。ジェリバン将軍の……勝ちと、する」
しばし唖然としていた和雅は我に返り――目を伏せたまま、絞り出すような声色で、決着を告げた。
「やったぁあ〜! ワーリすげぇっ! やっぱすげぇよっ! ジャップ野郎め、ざまあみろっ!」
この結末に歓喜する観衆は、ただ一人。
ダウゥ姫は満面の笑みを浮かべて練兵場の舞台に上がり込むと、父のように慕い続けてきた男の胸元に飛び込んだ。
「姫様……ありがとうございます。これで我らは、国を出ていくことにはなりますまい。最期の瞬間まで、共にこの土地に暮らしましょうぞ」
「うんっ! うんっ! ずっと一緒だぞ! 死ぬまで一緒だっ!」
愛娘を愛でるように、ジェリバン将軍は姫君の頭を撫でる。ダウゥ姫は、そんな彼の巨大な胸板の中で、甘えるように顔をこすりつけていた。
――だが、望んでいた結果を手にしたはずの、将軍の顔には。
釈然としない色が、滲んでいた。本当に、これでよかったのか――と。
「さて。決着はついたな、カズマサ殿。我々が瀧上凱樹の件を公表する前に、貴殿の仲間達――NGOの勇士達と共に、この国を脱出されることを推奨したい。袂を分かつことになるとは言え、我が国をここまで育ててくれた恩人達だ。無益に危険な目に遭わせたくはない」
しかし、ここまで来てしまった以上、もはや彼自身に引き返すという選択肢はない。せめてもの慈悲を掛けるように、ジェリバン将軍は練兵場の外に立つ和雅と向かい合う。
「くっ……」
予期しない結末を目の当たりにした和雅は、すぐには反応を示さなかったが――この事態に対処するための、やむを得ない措置を見出だし、重々しく口を開いた。
「……待ってほしい」
彼の胸中には、奥の手が眠っていた。この決着によるダスカリアン衰退を未然に防ぎ、国民を貧困から救う、最後の手段が。
――だが、それは決して許されてはならない。禁断の果実。だからこそ和雅は、剣一に何としても勝ってほしいと、願っていたのだ。
その剣一は今も気を失っているらしく、起き上がる気配がない。もし彼に意識があったなら、和雅の喉に飛び付いてでも止めようとしていただろう。
だが。それほどの
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