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フルメタル・アクションヒーローズ
第156話 古我知剣一の戦い
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アアァアーッ!」

 獣の如き雄叫びと共に、剣一の刃――高電圧ダガーが唸りを上げる。
 狙うは、装甲の隙間に見える急所。すなわち、人工筋肉の生命線だ。

 圧倒的な性能差が物を言ったのか。
 一瞬の内に地を蹴り、間合いに飛び込んだ剣一と視線が交わっても、ジェリバン将軍は一歩も動かずにいた。

「ワッ……ワァーリィーッ!」

 一見すると優男のようにも見える剣一の、チーターにも劣らない駿足を目の当たりにして、ダウゥ姫は思わず戸惑いの声を上げる。

 自分にとって、第二の父親とも言える男が。自分が知りうる、最強の戦士が。にっくき日本人にやられてしまう。
 そんな不安に駆り立てられた悲痛な叫びが、練兵場にこだまする。

 だが、その声を聞いたところで、剣一が攻撃の手を緩めることはない。これは彼にとって、国民全員を救うための戦いなのだから。

(取った……!)

 完全に高電圧ダガーが届く位置――左の脇腹部分に入り込み、剣一は思わず口元を吊り上げる。

 ここからまず右腕と右足の人工筋肉を断ち、攻撃力を奪う。そして、筋肉を斬られ反撃できない部位から狙って、少しずつ切り崩す。
 その作戦が実現できる、後一歩というところまでたどり着いたのだ。

 この一閃で、全てが終わる。

 その結末を信じて疑わない、無垢な刃が矢のように飛び――

 ――空を斬る。

「がっ……!?」

 狙いが逸れたわけではない。手を抜いたわけでもない。
 正真正銘、本気の斬撃だった。外れないわけがなかったのだ。

 それなのに。確実に勝てるはずだったのに。

 気が付けば剣一の仮面は宙に弾けとび、彼の白い身体はジェリバン将軍の傍らに倒れ伏していた。
 視界が一瞬にして暗転し、成す術もなく地に沈む「必要悪」。俯せになったその身体が、勇ましく起き上がることは――なかった。

「……」

 そして彼の頭上には、日の光を浴びて鈍い輝きを放つ、銅色の肘。
 決着の瞬間を見逃した者も、この光景を見れば、闘いがどのような結末を迎えたかは一目瞭然であろう。

 剣一の高電圧ダガーが右腕の電線を切ろうと、肘関節の隙間に向けて伸びた瞬間。紙一重で腕を上げ、彼の斬撃をいなし――勢い余った彼の延髄に、肘鉄を見舞ったのだ。
 旧式の鈍重なパワードスーツでありながら、最新鋭サイボーグの攻撃を当たる寸前まで引き付けて回避し、あまつさえ咄嗟にカウンターまでこなしてしまう戦闘センスと、スペック差を覆す圧倒的身体能力。
 将軍の三十年以上に渡る実戦経験の重みを、剣一の性能とスピードは――超えられなかったのだ。

「――興ざめだ。ガトリングすら使うことなく終わるとはな。この程度で瀧上凱樹を倒したなどと……笑わせる」

 剣一が倒れ、
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