第155話 王が去るか、国が死すか
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女だが、その振る舞いは一国の姫君としての一般的なイメージとは、大きく掛け離れたものとなっていた。
身長は百五十センチ前後といったところであり、十六歳という年齢を考えれば、比較的小柄な部類に当たるものと考えられる。
胸部の発育も――良好とは言い難い。紫色の薄いドレスの上からでも、その幼さははっきりと窺い知れる。
きめ細やかな褐色の肌は滑らかな曲線を描き、焦げ茶色の長髪はツインテールに纏められている。恐らくは彼女の髪型も、外国の文化による影響が生んだのだろう。
そんな王女らしからぬ美少女の挙動に、剣一と和雅は「相変わらず手厳しいな」と苦笑している。こうして憎しみを向けられるのも、慣れてしまっているのだ。
――否、慣れざるを得ないのだろう。彼らには、ここで償い続ける義務があるという、覚悟があるのだから。
「……わかっているな、剣一君」
「えぇ、もちろんです。この『決闘』だけは――絶対に負けられません」
「それなら構わん。……頼むぞ」
ジェリバン将軍やダウゥ姫に聞こえないように、和雅は剣一に耳打ちする。その真意を汲み取った剣一は、強く頷き――これから戦う相手となる、漆黒の武将と視線を交錯させた。
古我知剣一は、一年前に瀧上凱樹を倒し、この国の仇敵を討ち取った人物。少なくとも、ダスカリアン側からはそう目されていた。瀧上凱樹を討ち取る戦いで、彼が重要な役割を果たしていたことは、確かに間違いではない。
しかしその認識には――僅かながら、真実との差異があった。
もう一人。瀧上凱樹と戦い、この国の無念を晴らした少年がいたのだ。
だが、その少年の存在はジェリバン将軍らには伏せられていた。その少年が、レスキューを目的として生まれた着鎧甲冑を使う「レスキューヒーロー」を目指していたからだ。
過酷な戦いを乗り越え、自分の夢に向かい突き進む少年を、どうしてこの戦いに巻き込めようか。
――そう考えている青年は、彼の夢を邪魔しないためにも、「自分一人で瀧上凱樹を倒した」という嘘を、これからも吐き続けなければならないのである。
「失礼したな。では、明日の正午。王城近くの練兵場で会おう。軍の連中は街の外の射撃訓練に向かわせておく。人目につくことはあるまい」
「……えぇ」
贖罪のために生きる改造人間、「必要悪」として。
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