第155話 王が去るか、国が死すか
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間まで共に生まれ育った土地で暮らそう――ということか。私が言えた義理ではないが、為政者のやることではないな」
「貴殿の言う通りだ。……しかし私は、この国の守り人であるのと同時に、姫様の父親代わりでもある。十一年前の侵略で、当時の国王様と王妃様が亡くなられてから――姫様は、長らく苦しんで来られた。この上、国王様方の仇も討てず、想いをぶつけることも出来ず、ただ黙って耐え忍ぶのみの人生など……あまりに惨い」
そのジェリバン将軍の言葉に、王女は無言のまま俯き、拳を握り締める。溢れ出る激情を、強引に押さえ込もうとしているかのように。
「まさしくどの道を選んでも、行く先は破滅……ということになるな。そのどちらかを決めるための『賭け』が『決闘』というのも、武闘派の将軍殿らしいところではあるが」
「――そうだな。知っての通り、国防軍に於ける私の権威は、私個人が持つ『絶対的戦闘力』によって保たれている。自慢していい話ではないが、私はこの国のオアシスを狙う『一個師団』に相当する武装集団共を撃退したことがある。……単身でな」
「米軍から復興資金の援助を条件に、試験運用を依頼された特殊戦闘用装甲服『銅殻勇鎧』……だったな。その圧倒的な強さで軍を束ね、この国を治めている――か。万一将軍殿が人道を踏み外せば、恐ろしいことになるな」
「フッ。考えようによっては、瀧上凱樹の侵略を無理矢理に否定することこそがそれに当たるのかも知れんがな。――さて、『決闘』の主旨を再確認しようか」
ジェリバン将軍は一瞬、自嘲するように口元を緩め――上体を前に倒し、改まった表情で和雅の顔を見据えた。
いよいよ、本題に移る――という顔だ。
「この国の中に於いて、私の強さは絶対視されている。瀧上凱樹の関与を疑い、日本人に反発した私の部下達が一瞬で黙ったようにな」
「――そして過激派の勢いを強引に抑え、日本に食って掛かれないようにするには……『インパクトに溢れた新事実』を持って来なければならない、ということだったな。『将軍殿を超える者がいる』という『新事実』を」
「そう。『個人』で私の戦闘力を超える猛者が日本人にいる――そんなことが知れれば、国中が震撼する大ニュースになるはずだ。過激派も萎縮して、日本に対する反抗心もある程度は抑えられるだろう。それから時間を掛けて、今後のように『日本の助力』で国の発展を進められれば、軋轢を少しずつ解消していくこともできる。……もっとも、その代わりとして私の威光は失墜し、王女様共々失脚することになるだろうがな」
「その存在を『決闘』によって明らかにして、王女様の居場所を犠牲に、この国を『かりそめの平和』で守り抜くか。それとも将軍殿の勝利で『絶対的戦闘力』の伝説を確固たるものとして、過激派を含めた国防軍の
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