第153話 十九年前の死
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、女優さえ逃げ出す美貌を手にしている絶世の美女は、夫と祖父に呆れたような視線を送ると――最愛の娘を愛おしげに抱き上げた。
すると、それまで凄まじい声で泣き続けていた少女は僅かに落ち着いたのか、雫を頬に伝わせたまま叫びを止めてしまう。そして、泣き腫らした瞳で母を見上げると、今度はその豊満な胸に顔を押し当てた。
「ママ、ママっ……やだよぅ、いなくなっちゃ、いやぁ……! パパもママもおじいちゃんも、いなくなるなんて、やぁっ……!」
「あら……。ふふ、樋稟ったら寂しがりやさんね。大丈夫、誰もいなくなったりはしないわ。皆、いつまでも一緒よ」
「……ホントに? ホントにホント? ひりん、独りぼっちにならない?」
「ええ、絶対にならないわ。もし、いつかパパやママやおじいちゃんがいなくなっても――あなたは、独りきりになんてならないわよ」
自分の胸の中で泣きじゃくり、ひたすら「いなくならないで」と哀願する愛娘の頭を撫で、華稟は優しげに微笑む。
「ひりん、独りぼっちにならないの? なんで?」
次いで、少女は母の言葉の意味を探るように顔を上げると、目を丸くした。
そんな娘の反応が面白かったのか、母は口元を緩めて満面の笑みを浮かべる。そして娘と額を合わせながら、その小さな耳元にそっと囁くのだった。
「樋稟が大きくなったらね、きっと素敵な王子様が迎えに来てくれるのよ。ママ達がいなくなる頃には、樋稟はママよりずっと綺麗なお姫様になって王子様と結婚してるの」
「おうじさま……? おうじさまが、来てくれるの!?」
「うんっ、そうよ! 王子様はすごくかっこよくて、優しくて……。きっと誰よりも、樋稟を大切にしてくれるわ。だからその時まで、ママ達と一緒にいよう? おばあちゃんも、きっと応援してくれるわ」
「おばあちゃんも……? う……うんっ! ひりん、おうじさまとけっこんしたいっ! でもね、ママとパパとおじいちゃんも、ずっと一緒だよっ! おばあちゃんも一緒っ!」
「ふふっ……そうね。ずっと一緒にいようねっ!」
いつしか少女は完全に泣き止み、母と暖かく笑い合っていた。父と祖父が蚊帳の外になっていることも忘れて。
「さぁ、じゃあママとお外で遊ぼっか!」
「うんっ! いこいこっ!」
あっという間に娘を宥めてしまった妻の手腕に、甲侍郎は唖然としている。そんな彼の太股を叩き、稟吾郎丸は「父親は辛いのぅ」と苦笑いを浮かべていた。
そして周りの助手達も、困ったような笑顔を互いに向け合うのだった。やはり華稟には敵わない、と。
――そして、二〇二八年。
救芽井家は「着鎧甲冑」をレスキュー専用の最新鋭パワードスーツとして、ついに公式の場で発表した。
同時に、甲侍郎は助手や交友のある起業家達と共に、
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