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歌集「冬寂月」
十二

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 月もなく

  冷ゑし夜闇に

    そぼ降るは

 音なき影と

    見えぬ雪かな



 今日は月もなく…本当に真っ暗な夜だ…。

 風も冷々とし、闇が部屋の中まで流れ込んでくるかのようで…。

 寂しさは想いを呼び…逢えぬ人の顔を心へと浮かび上がらせる…。

 あの人と在れた故郷…記憶の雪が、まるでこの闇の中へ想いと共にそぼ降っているようだ…。



 忘れじの

  時そありてや

    秘めにける

 哀れむものは

   世にはあるまじ



 忘れることなど有り得ない…そんな時間があるからこそ、想いを秘めて行くしかないのだ…。

 こんな私を哀れむ者などこの世にはないのだから…一人、歩み行くしかないのだ…。


 たとえ…あの人に忘れられようとも…。




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