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レーヴァティン
第三十七話 極寒の地その三
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「それで四十度はいけても」
「六十度になると」
「量は飲めないな」
 それは無理だとだ、透き通った一見すると水に見えるその酒を飲みつつ久志に応えてそうして言った。
「流石にな」
「まあ量飲むお酒じゃないしね」
「ああ、あったまる為だからな」
「それ位でいいんだよ」
「そうなるな、じゃあ今夜はこのままな」
「テントの中でね」
「寒さを凌ぐか、まあ吹雪が終わるまではな」
 夜が明けてもだ。
「この中にいるか」
「それまでは動けないね」
「ああ、まあ仕方ないな」
「若し今外に出てもね」
「進どころじゃないからな」
 それはとてもというのだ。
「諦めて休むか」
「そうしようね」
「じゃあ飯食って寝るか」
 鍋を見つつだ、こうも言った久志だった。
「幸い鍋の肉は多いしな」
「お茶もあります」
 順一がこちらを出した。
「お湯もありますので」
「ああ、お茶も飲まないとな」
「はい、これでビタミンを補給しましょう」
 そちらも忘れるなというのだ。
「そして乾パンもありますし」
「そういうの買っておいてよかったな」
「こうした場所に入るのなら」
 極寒の進むことすらままならないことが多い地ではというのだ。
「こうしたこともあるとです」
「最初から頭に入れてか」
「行くべきです」
 そうだというのだ。
「この様に」
「そういうことだよな、何かな」
「何かとは」
「東部戦線みたいだな」
 こんなこともだ、久志は言ったのだった。
「今の俺達って」
「東部戦線って二次大戦の」
「ああ、あそこみたいだな」
 こう淳二にも話した。
「何かな」
「そう言われればそうかな」
「そうだろ、寒くて簡単に動けないなんてな」
「確かに東部戦線だね」
「ああ、あの時はドイツ軍は冬に負けたよな」
 そして数にだ、ソ連軍の数はあまりにも多くその物量にドイツ軍は負けたのだ。ただしアメリカの援助もソ連にとって非常に大きくこれがないとソ連は敗れていたとさえ言われている。
「ドイツも寒い国だけれどな」
「ロシアは遥かにだから」
 そのドイツよりもというのだ。
「ドイツ軍も負けたんだよ」
「ドイツ以上の寒さか」
「そうだよ、ここはまさにね」
「北欧の中でも北でか」
「ロシアだよ」
 そこまでの寒さだというのだ。
「気温も吹雪もね」
「どっちもか」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「こうしたことはね」
「意識してか」
「進んでいかないとね」
「そういうことだな、じゃあ肉も煮えたしな」
 鍋の中のそれがだ、見れば肉以外は入っていない。
「食うか」
「そうしようね」
「野菜も欲しいところでござるが」
 進太はこちらもあればいいと言った。
「味覚的にも栄養的にも」

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