第3部 着鎧甲冑ドラッヘンファイヤー重殻
プロローグ
第151話 四十八年前の死
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き様ではなかったのかも知れん……ゲホッ!」
「父上、これ以上喋っては……!」
「構うな……どうせ、今日限りの命、じゃ。それより、約束せい。『一煉寺』の名に囚われぬ生き方を選べる子には……拳の道にのみ進まぬ子には、その子に相応しい未来をくれてやる、と……ゴフッ! ゲホ、ゴホッ!」
秒刻みで悪化していく咳。その間隔が短くなっていくに連れて、男は自らの身体から熱が失われていくのを感じた。
「グッ……ふふ。全く、とんだお笑い草じゃ、な。裏社会のゴロツキ共を震え上がらせた一煉寺の始祖が、こんな山奥の『自宅』で病死とは、の……」
「ち、父上ッ……や、約束します、龍拳の意思は汲みます! だから、だからもうッ……!」
「なぁ……に、ワシは、いつでもお前らを見ておる……せ、せいぜい、子孫にだけは、楽しく、やらせて、や、れ……」
死ぬ前に、何を言い残すべきか。
それを考えた末に男が口に出したのは、未来の――子孫達への、想いだった。
「ち、父上……! 父上ッ!」
後悔に塗れた人生から解放された男の死に顔は、闘病の末とは思えぬほど安らかだったという。
時は一九八二年。
強靭に鍛え上げた拳と肉体を以って、裏社会の悪を裁く少林寺拳法の一門「一煉寺家」の創始者、一煉寺龍平はこの日、永い眠りの時を迎えたのだった。
――しかし。
彼が永遠に旅立つ瞬間、思い浮かべていたのは……亡き妻や家族だけではない。
「……」
まだ自身が花淵龍平だった頃。遠い地で出会っていた――褐色の肌を持つ、とある異国の女性。
なぜ彼は死ぬ直前、その女性のことを想ったのか。
その理由を――知る者はいない。
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