第150話 ヒーローの始まり
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手段で対抗しようとしていた樋稟と賀織が、恥じらいから断念してしまった程に。
「ほ、ほんとにもう、久水さんったら……!」
「まま、まだ負けとらん! まだアタシらは負けとらんでっ! ……だって、アタシ龍太と……えへへ」
「……生涯衰えない若さは、絶対的な武器になる。いつかは、ボクも梢と一緒に先輩と……」
だが、彼女のこうした暴挙を、他の同じ想いを持つ少女達は以前ほど厳しく咎めなくなっていた。そのエスカレートしていく求愛に少なからず、共感する節があるからだ。
――着鎧甲冑の正式な所有資格を取り、どんな人間も完全無差別に救出する「怪物的」レスキューヒーローを目指す龍太。その道には、当然ながら普通の資格者以上の危険が伴うことになる。
志半ばで倒れ、命を落とす可能性は絶大であると言えよう。瀧上凱樹の現場での処遇を巡る、常軌を逸した彼の判断がそれを証明している。
例え周りが何を言おうと、恐らく彼がその姿勢を改めることはない。彼という人物に触れ、想いを募らせる少女達の誰もが、そう予見していた。
だが、レスキューヒーローを志す一煉寺龍太という人間が居たからこそ、彼女達が救われたところもある。その事実がある手前、彼女達は容易にその生き方を阻むことができないでいた。
夢は応援したい。目標に向かう、その背を押したい。だが、その先にあるかも知れない末路を、自分は素直に受け止めることができるだろうか? 少女達は、常にその葛藤を胸に宿し、彼を見つめているのだ。
その最中、自らの苦悩を打ち破るためにいち早く行動に移したのが、久水梢なのである。
強引過ぎて引かれるのではないか。いつか、本格的に嫌われてしまうのではないか。そうした恐怖に敢然と立ち向かい、自らの力で彼の心をつかみ取るべく、思慕の全てをぶつけ続ける彼女。
その胸中には、いつか彼が目の前から消えてしまう日が来るのでは、という脅威に立ち向かう決意があった。
彼の子を――遺伝子を繋ぎ止めれば、例え彼がいつか命を落としたとしても、彼の血筋を存続させることができる。自分を救い、親友のためにも戦ってくれた最愛の男性が生きた証を、より明確に刻むことができる。そして何より、彼の自己犠牲を思い止まらせる理由にも繋がるのだ。
「龍生」という名に込められた「何があっても『生き続けて』欲しい」、とする彼女の願いが、それを象徴していた。
怪物になろうとする生き様を肯定することは決してできないが、自分が身体を張って止めようとしたところで、彼が立ち止まることはない。そう感じていた彼女は、一刻も早く「彼」という存在を、確実にこの世に残そうとしているのだ。
だからといって、彼の無事を諦めたわけでもない。着鎧甲冑の資格を手にして、レスキューヒーローを目指すのは構
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